ブロックチェーン技術は世界中で今、注目を集めている技術です。ブロックチェーン技術を応用した実証実験や、すでに運用を始めている国も多くあります。ブロックチェーン技術は、実際にどのような分野で応用されているのでしょうか。
応用例をいくつか挙げながら、そこから見えるブロックチェーン技術を導入する利点と、導入する際の4つの問題点を見ていきたいと思います。
ブロックチェーンの技術が転用される理由
ブロックチェーン技術はさまざまな分野への転用が期待されています。ブロックチェーン技術のもつ、どういった側面がさまざまな分野へ転用が可能になるのでしょうか。ブロックチェーン技術が転用される理由をみていきたいと思います。
ブロックチェーンの公平性や透明性
ブロックチェーンは中央に管理する者がおらず、各ユーザーがネットワークでデータを共有し、また、互いに監視し合うことで情報を分散管理しています。ブロックチェーン上では、各ユーザーは公平につながっており、皆で管理を行っているため不正を行うことはできません。そこには透明性が確保されています。
ブロックチェーンの普遍性と安全性
ブロックチェーン技術は、どの分野においても活用が期待されています。データを分散管理することや、P2Pネットワークのシステムから見ても高い安全性を確保できます。さまざまな分野に技術が応用されるには、普遍的な安全性が確立していないことには難しいでしょう。
ブロックチェーンの追跡能力と管理のしやすさ
ブロックチェーン上では、データを各ブロックに記録しています。このデータは時系列ごとにチェーンのように繋がっています。そのため、ブロックチェーンで記録されたデータは他のシステムと比べると追跡能力が高いという特徴があります。
また、データは分散管理されているため、システムダウンをするリスクがなく、データが管理しやすい技術だといえます。
ブロックチェーンのデータ共有能力とデータ保存
ブロックチェーン技術の特徴は、データの共有のしやすさと、透明性の高いデータ保存にあります。ブロックチェーン技術はユーザー同士でデータを共有し、管理を行っています。ブロックチェーン上のデータは、誰でもアクセスが可能であり、また、その特性ゆえに不正が起こりにくい環境であるといえます。
ブロックチェーンの応用例:金融・資産運用での活用例
すでにブロックチェーン技術は、金融業界や資産運用での場面で活用が始まっています。ブロックチェーン技術のどういった特徴が金融業界などで活かされているのでしょうか。
簡単に例を挙げながらみていきたいと思います。
銀行や証券など金融業での活用で不正やシステムダウンの回避
銀行や証券などの金融業界では、これまでは中央集権型の管理システムが一般的でした。ブロックチェーン技術を活用することで、データの不正や改ざんを行うことは不可能だと言われています。
また、データを分散管理することで、1部のシステムがダウンしても、他のシステムは利用できるため、全システムがダウンし業務がストップしてしまうリスクを回避できます。
保険業界ではすでにブロックチェーン技術が活用されている
保険業界ではブロックチェーン技術の活用が始まっています。これまでの保険業界は、保険料の料金設定が消費者にとって不透明であり、わかりづらいものでした。
保険会社のAIGでは、保険証券をブロックチェーン技術を活用して発行しています。ブロックチェーン技術を利用し、さまざまな契約に伴う処理を全てデジタル化することで、それに伴う業務効率が飛躍的に向上しています。
不動産取引ですでにウクライナで活用されている
ブロックチェーン技術を不動産登記へ導入しようとする試みがすでに始まっています。
土地の不動産登記においての管理者は政府ですが、ブロックチェーン技術を導入することで管理者がいなくても、情報を安全に管理することが可能です。また、従来と比べて処理にかかるコストを抑えることができ、効率的に処理を行うことも可能です。
ウクライナでは、政府主導で不動産登記をブロックチェーンで行う実証実験が始まっています。
CAT債券にブロックチェーンの技術が使われている
ブロックチェーン技術は、CAT債券にも応用され、活用されています。
CAT債券は、自然災害などにより起こるファイナンシャルリスクに備えて企業が発行している債券です。通常の債券より高い利息が支払われています。CAT債券の支払いなどのシステムにブロックチェーン技術が活用され、透明性の高い支払いを行うことが可能です。
ブロックチェーンの応用例:金融・資産運用以外の活用例
ブロックチェーン技術は、さまざまな分野に応用可能な凡用性の高い優れた技術です。先に紹介してきた、金融・資産運用の分野以外の分野にもブロックチェーン技術は活用されています。代表的な活用事例を紹介していきたいと思います。
ゴミの管理や課税や公共事業などに応用されている
ブロックチェーン技術を導入してゴミ処理量を監視し、またそれにかかる費用を正確に把握することが可能となります。また、課税や公共事業の分野での導入も盛んです。ブロックチェーン技術の活用により、機密性の高いデータも安全に管理することができ、効率よく処理を行うことが可能です。
ダイヤモンドの取引などに活用する事で不正取引を防ぐ
ダイヤモンド全てにIDを付け、ダイヤモンドの全ての情報をデータベース化し、採掘から消費者の手に渡るまでの全てを追跡可能としたのがブロックチェーン技術です。
ダイヤモンドの流通過程全てをブロックチェーン上に記録することで、業務を効率化でき、不正を防ぐことができます。消費者もダイヤモンドの産地や真正性を知ることができ、安心してダイヤモンドを購入可能です。
ゲームやSNSやストリーミングなどに応用しやすい
ブロックチェーン技術は、ゲームやSNSなどに応用しやすい技術であるといえます。ブロックチェーン技術を導入することで、不正や改ざんが起こるリスクを減らすことが可能です。
ゲームでは、海賊版が出回ることを防止でき、SNSではなりすまし詐欺を防ぐことも可能です。ストリーミングにおいては、例えば音楽をアーティストから直接購入することも可能となるでしょう。
旅行や空港などですでにブロックチェーン技術が応用されている
航空業界でもブロックチェーン技術とスマートコントラクトが応用されています。航空会社と空港の情報を一元管理して情報を共有し、ある条件の元ではスマートコントラクトで対応を図るという試みが始まっています。
空港や旅行会社の代金の支払いに仮想通貨が使われるなどしており、ブロックチェーン技術は幅広く活用され始めています。
ブロックチェーンの応用例やサービス例からみる今後の課題
ブロックチェーン技術は優れた技術であるため、そのメリットだけに焦点が当てられがちですが、いくつかの課題が残されていることも事実です。ブロックチェーン技術を活用した応用例から、どのような課題が存在するのかを見ていきたいと思います。
改ざんが不可能や困難だが仮想通貨によって安全性が異なる
ブロックチェーン技術はデータの改ざんが困難ではありますが、仮想通貨によって利用されているブロックチェーン技術が異なります。ブロックチェーン技術にはいくつかの種類があり、それにより安全性が異なっているため、分野に合ったブロックチェーン技術を活用することが大切です。
全ての分野でブロックチェーンが応用できるとは限らない
ブロックチェーン技術は、全ての分野で応用可能な技術のように言われています。
ですが、ブロックチェーン技術を導入することで作業効率が落ちてしまう場合もあり、ブロックチェーン技術の導入を検討する際には、ブロックチェーン技術がその工程に適合し、導入によって効率化できるのかを慎重に検討する必要があります。
今後各国でブロックチェーンの規制がどうなるかが未知数
ブロックチェーン技術はすでにさまざまな国でいろんな分野で活用されています。ですが、各分野で制定されている規制に対応されないまま活用されているのが現実です。ブロックチェーンに関する規制をどのように整えていくのか、各国で求められている課題といえるでしょう。
完璧なセキュリティは難しい!ハッカーとのいたちごっこ
ブロックチェーン技術は不正や改ざんが極めて難しい技術ですが、また、サイバー攻撃も日々進化を続けています。ブロックチェーン技術もまた、進化を続ける技術であり、常にあらゆるサイバー攻撃を受ける可能性は捨てきれません。
ブロックチェーンの応用例のまとめ
ブロックチェーン技術がさまざまな分野でどのように応用されているのかを見てきました。幅広い分野でブロックチェーン技術はすでに活用されており、それに伴う実績も上げています。今後も更に、ブロックチェーン技術を導入する企業は増えていくと思います。
ですが、ブロックチェーン技術にも相性があり、導入を検討する際もなぜ、ブロックチェーン技術を導入するのかを慎重に検討する必要があるでしょう。