ブロックチェーン技術がさまざまな分野への応用が進む中、電力会社にもブロックチェーン技術の導入が進んでいます。なぜ、電力会社にブロックチェーンが導入されているのでしょうか。
導入が進む2つの理由と、導入することの4つのメリットを解説していきたいと思います。
ブロックチェーン技術の電力への応用
ブロックチェーン技術のようにデータを分散管理することで、データを安全に管理することができ、また、データを管理するコストの削減を図ることが可能になります。このブロックチェーン技術を、エネルギー業界に応用しようとする試みが始まっています。
その試みとは一体、どういったものなのでしょうか。簡単に解説をしていきたいと思います。
これまでの電力は電力会社からの供給のみが常識だった
これまでの電力といえば、電力会社が保有する発電所から電気が発電され、その後一般消費者が電気を利用し、その消費した電力の料金を払う(基本料金なども含む)といったスタイルが一般的でした。
しかし、現在では再生エネルギーの固定価格買取制度により、家庭などで発電して余った電力を電力会社に売ることができるようになっています。
ソーラー発電システムの出現で電力を売る時代になった
1990年代からソーラー発電システムが一般家庭にも普及するようになり、一般家庭で発電した電力を自宅で消費し、余った電力を電力会社に売る時代へと変化しました。電力は供給されるだけのものだったのが、消費者も電力を発電し、余った電力を売り買いできる時代へと変わってきました。
2009年から国を挙げて始まった制度により、一般家庭にもソーラー発電システムが普及し、余った電力を電力会社に買い取ってもらう時代となっています。
海外ではすでに活用について検討が始まっている
海外では、エネルギー業界にブロックチェーン技術を取り入れようとする試みが始まっています。個人がソーラー発電によって発電した電力を、自宅で消費し、余った電力を個人同士で自由に取引できるようにするサービスを、ブロックチェーンの技術を利用して行おうとする試みが始まっています。
ブロックチェーンのP2Pネットワークやスマートコントラクトを応用して、個人同士で信頼できる取引を行うことが可能なサービスの開発を目指しています。
ブロックチェーンの何が電力会社に使われるのか?
ブロックチェーン技術を応用してエネルギー業界に活かす取組みが始まっていることを簡単に解説してきました。
具体的には、ブロックチェーン技術のどういった部分が、電力会社に活用されていくのでしょうか。仮想通貨の開発が元となった技術が、全く違う分野でどのように活用されていくのでしょうか。
ブロックチェーンで送電網を管理する事ができる
まず、ブロックチェーンで送電網を管理できるようになります。ブロックチェーンのP2Pネットワークを活用することで、これまでのように中間業者として複数の業者が介在する必要がなくなります。
複数の業者が介在することで不正や人為的なミスが起こりやすい環境でしたが、透明性の高い安全な情報を管理することが可能であり、余計な取引コストが発生しないため、コストの削減を図ることができます。
再生可能エネルギーの環境価値の交換を行う事ができる
ブロックチェーン技術を活用することで、再生可能エネルギーの環境価値の交換を行うことができます。電力の提供者と電力の購入者がP2Pネットワークを利用することで、これまでのように複雑なシステムを介さずに、シンプルに電力の売買を行うことが可能となります。
ブロックチェーンを利用すると、ユーザー間で取引を監視し合っているため、不正な取引を行うことは不可能であり、常に信頼性の高い取引を行うことが可能です。
ブロックチェーンの技術による電力消費管理と4つのメリット
ブロックチェーン技術を応用することで、どのように電力の消費を管理していくのでしょうか。また、ブロックチェーン技術を応用することでどのようなメリットが生まれるのでしょうか。簡単に説明をしていきたいと思います。
取引される電力量を管理する事ができるようになる
ブロックチェーン技術を応用して取引される電力量を管理できるようになります。ユーザー同士で情報を管理し合っているため、データの改ざんや会計上のミスが起こりにくいといったメリットをブロックチェーンの技術はもっています。
また、ブロックチェーンのスマートコントラクトの技術を応用することで、さまざまなコストの削減を図ることができるでしょう。
環境価値の管理を効率的に行う事ができる
ブロックチェーンの技術を応用することで、再生可能エネルギーの環境価値の管理を効率的に行うことが可能です。これまでのような中央集権型の管理体制では、再生可能エネルギーの環境価値の管理を行うことは、複雑であり、また、管理するデータも不透明なものが多く、データとしての正確性に欠けるものでした。
ブロックチェーンの技術を応用することで無駄な業者などを省くことが可能なため、非常に効率よくデータの管理を行うことが可能です。
それによって環境価値の保持や交換を行う事ができる
再生可能エネルギーの管理がブロックチェーン技術を応用して利用することで可能になると、環境価値の保持や交換を行うことも可能になります。
これまでは環境価値を保持し管理することは、時間やコストも大幅にかかっていましたが、ブロックチェーン技術を活用することで管理がしやすくなり、また、人を介さずにそれらを行うことが可能になるため、コストの削減も図ることができます。
近所同士で電力の余剰分の売買を行う事ができるようになる
再生可能エネルギーがブロックチェーンの技術を応用して管理できるようになり、環境価値の保持や交換ができるようになると、近所同士で電力の売買を行うことが可能となります。
ブロックチェーンを応用することで、仲介業者を介さずに自動契約を締結することが可能となり、また、ネットワークに参加しているユーザー同士で情報の監視を行っているため、常に透明性の高い取引を行うことが可能です。
ブロックチェーンが電力会社に使われるための課題もある
ブロックチェーン技術をエネルギー業界に応用することで、さまざまなメリットをもたらす可能性があることを解説してきました。ですが、ブロックチェーン技術を導入するにはいくつかの課題もまだまだあります。それはどのようなものなのでしょうか。
電力会社のシステムにブロックチェーン技術を導入する必要がある
まず、ブロックチェーン技術を応用するためには電力会社のシステムにブロックチェーン技術を導入する必要があります。ブロックチェーンの特徴は、ユーザー同士でネットワークを共有しデータを分散管理することにあります。これは、少ないコストでシステムを構築することが可能です。
電力会社の大規模なシステムをブロックチェーンに変更することは難しいかもしれませんが、随時、ブロックチェーンに置き換えることが可能な部分から導入するといったことも可能なのかもしれません。
システムの導入は企業に限らず一般家庭にも必要になる
ブロックチェーンは、ユーザー同士で情報を監視し、管理し合う技術です。電力会社だけがブロックチェーンを導入しても、消費者がブロックチェーンを導入しないことにはブロックチェーンの恩恵を受けることはできません。
企業側が、消費者にブロックチェーンの導入を促す広報活動などを行うといった行動を起こす必要があり、また、消費者も自ら導入に向けて行動を起こす必要があるといえます。
ブロックチェーンと電力のまとめ
ブロックチェーン技術が電力業界に導入されることで、さまざまなメリットが生まれることを簡単に説明してきました。ブロックチェーン技術を応用することで、今後さらに、再生可能エネルギーの保持や管理がしやすくなり、透明性の高いサービスを受けることが可能になります。
2019年問題もブロックチェーンの技術を受けて新たな解決策が見つかる可能性が高いといえるでしょう。
ブロックチェーン技術の導入を進める企業も出てきており、これまで以上にブロックチェーン技術を活用したサービスが数多く提供されていく未来はそう遠くはありません。ブロックチェーンの導入が進むことで、消費者とエネルギーのあり方が大きく変わっていくことでしょう。