近年話題となっている仮想通貨は電子マネーやポイントなどのデジタル通貨の一種です。銀行が発行している円やドルなどの法定通貨のように、国家による価値の保証はされていません。また紙幣や硬貨のように実物として存在せず、インターネット上のみで発行・管理・取引されています。
仮想通貨は金銭を持ち歩いて落としたり盗まれたりして紛失してしまうことがありません。かといってインターネットのセキュリティには問題ないのか?そう疑問に思いますよね。安心してください。仮想通貨はインターネット上でブロックチェーンという複雑な暗号技術によって安全に管理されています。
今回はそんなインターネット以来の革命的技術とも言われている、ブロックチェーンの仕組みについてご紹介します。
ブロックチェーンの3つの仕組みと特徴と理論
ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンは分散型台帳技術とも呼ばれており、トランザクションを分散して不特定多数のユーザーで管理し合います。トランザクションとは売りたい人と買いたい人によって行われる取引のことです。
従来の管理システムは特定の管理者が中央サーバーなどの大規模なサーバーにトランザクションを集約させて管理する、中央集権型が主流でした。一方ブロックチェーンは分散型台帳技術とあるように、トランザクションを分散させて複数のコンピュータで管理するシステムです。
ではこの管理システムが成り立つ3つの仕組みを見ていきましょう。
P2Pネットワーク
まず中央集権型の仕組みについてご説明します。中央集権型はデータを一括管理するサーバーと、それにアクセスするクライアントが存在する「クライアント・サーバー型」という技術によって管理されています。
この管理システムではサーバーが全てのデータを一括管理しているので、悪意あるものによるハッキングやシステムの不具合、定期的なメンテナンスによってネットワーク全体が利用できなくなります。ダウンタイム(稼働停止時間)が生じてしまうのです。
一方ブロックチェーンの「P2Pネットワーク」は、ユーザー同士を直接つなげネットワークで全てのデータを共有します。例え1台のコンピュータにダウンタイムが生じても、それ以外の複数のコンピュータが機能しているので管理自体に支障がありません。
つまりブロックチェーンのP2Pネットワークはゼロダウンタイムを実現することができるのです。ちなみにP2Pとは「Peer to Peer」の略称で対等なもの同士の間という意味をもちます。
暗号アルゴリズム
まず暗号とは情報が当事者以外に解読できないように文字や記号を一定の約束で置き換えたものです。この一定の約束というのがアルゴリズムのことで、数学用語で問題解決のための段階的手段を意味しています。暗号アルゴリズムは大きく分けて2つあります。
1つ目は公開鍵と秘密鍵の2つの鍵を使う公開鍵暗号方式です。これは情報の受け手と送り手のどちらか一方が秘密鍵をもち、対になる2つの鍵が揃ったところでデータの暗号化と復号ができます。この方式だと秘密鍵が1つで管理が容易ですが、データの暗号化および複合が複雑なので処理速度が遅くなります。
2つ目は暗号化と復号に同じ鍵を用いる共通鍵暗号方式です。情報の受け手と送り手が同じ秘密鍵をもちます。この方式は高速処理が可能ですが送る相手の数だけ秘密鍵が必要となるので管理が大変です。
普遍性と匿名性
ブロックチェーンは普遍性と匿名性に優れた技術です。ビットコインのブロックチェーン上には、どのアドレスからどのアドレスにいくら送金したのかなどの情報が全て記録されています。つまりいつどのアドレスからどのアドレスにビットコインがいくら送金されたのかという事実が全世界に公開されるのです。
しかしここで注目して欲しいのが、ここで使用するアドレスは個人情報と全く結びつきがないということです。自らがこのアドレスは私のものです!とでも言わない限り、このアドレスの所有者は誰なのか?について確認するのは限りなく困難です。
だからこそ最強とも言える透明性と同時に高い匿名性をあわせもつことができるのです。
ブロックチェーンの仕組み:ブロックチェーンの種類は2つ
実はブロックチェーンにはさまざまなタイプがあり、大きく分けるとパブリック型とプライベート型の2つに分けることができます。ではそれぞれの特徴や使用例を見ていきましょう。
取引の確認やブロックの生成に自由に参加できるもの
まず1つ目は取引の確認やブロックの生成に自由に参加できるパブリック型です。全てのユーザーがノードやマイナーになることができます。
パブリック型の特徴と使用例
パブリック型の最大の特徴は管理者がいないということです。インターネットがつながる環境であれば誰でも自由に管理に参加することができます。またこのタイプのブロックチェーンは参加者が多ければ多いほど、データを改ざんされるリスクが軽減します。
どうしてかというと、半数の承認が得られなければその取引は記録されない仕組みになっているからです。多くの人がデータを共有し正しいかどうかチェックし合えば、それだけデータの正確性が高まります。
これによりパブリック型は不正や改ざんがしにくいというメリットがあります。世界初ブロックチェーン技術を応用したビットコインは、パブリック型の代表格です。
取引に関与する参加者が管理者によって許可された物限定なもの
パブリック型とは逆に管理者によって参加の許可を必要とするのがプライベート型とコンソーシアム型です。ブロックチェーンを管理する信頼を得られた人々か企業または機関しか、参加することができません。
プライベート型・コンソーシアム型の特徴と使用例
プライベート型・コンソーシアム型は中央組織のあるブロックチェーンです。両者の大きな特徴は参加には許可が必要で、パブリック型のように自由に参加することができないことです。このことから許可型ブロックチェーンとも呼ばれています。
使用例としては多くのアルトコインはパブリック型で構築されていますが、リップルはプライベート型に分類されます。また金融システムの管理に向いています。それは特定の参加者つまり信頼のある者たちだけで行われる管理システムで、高い整合性を得ることができるからです。
さらにパブリック型は複数のユーザーによる承認が必要で時間がかかってしまいますが、限られた参加者だけで行う管理システムは時間をかけずにスムーズな取引ができます。合意も早いのでブロックチェーンの仕様変更も簡単にできます。
ブロックチェーンの仕組み:実用性が高く注目を集めている
ブロックチェーンは本来ビットコインという仮想通貨のために作られた技術です。しかし幅広い分野に応用できる可能性があると、世界中から注目を集めています。
データの改ざんが難しく不正がしにくい
ブロックチェーンはトランザクション(取引)を集めたブロックを、時系列順にチェーン状につないだ構造をしています。新しく記録するさいは、直前のブロックをハッシュ関数で暗号化し次のブロックに格納します。ハッシュ関数は入力した値に対してまったく違う値が出力される暗号方式のことです。
これにより例え悪意のあるものがブロックを改ざんしたとしても、その先にブロックを追加し続けるためには膨大な計算処理を行わなければいけなくなります。さらにマイナーたちの半数から取引が正しいと承認されなければブロックチェーンに記録されない仕組みになっています。
データの改ざんは難しく不正がしにくいのです。また例え不正できたとしても全ての記録は全てのユーザーに複製して共有しています。公開されている全ての記録を見比べればすぐに不正だと分かってしまいます。複数台のコンピュータを同時に乗っ取りでもしない限り、改ざんは成立しにくいのです。
金融取引などの自動化が可能になる
ブロックチェーンは不特定多数のマイナーたちのコンピュータで同じ情報を共有そして保存します。マイナーたちは取引情報の整合性をチェックし半分以上のメンバーの同意を得られると、正しいデータとして記録されます。
記録した取引情報はチェーンのように時系列順に並んでいきます。たとえ悪意のあるものが情報を改ざんしようとしても、過去のデータまで変更する必要があり、改ざんは実質的に不可能と言われています。
これらのブロックチェーン技術を生かせば取引契約の自動化が可能です。信頼性の高い契約を効率よく行うことがでにます。
ブロックチェーンの仕組み:透明性の高い取引が可能
データの改ざん・不正流用・不正取引などはどこの業界にも起こり得ることで、最近では医療業界で起こった不正入試問題が話題になりました。命を預けることのある医療の現場で、このような不正行為は多くの人々にショックを与えました。
企業や医療機関そして政府の中にだって不正行為を働く人間はいるのです。このような問題は人のため国のため家族のためと一生懸命に働いているものたちがいる中、ほんの一部の悪意あるものたちによって行われます。
明るみに出ればイメージダウンや利益の損失、法に触れれば罰則を科されることもあります。しかしこれは罪悪感からの自供や内部告発がなければ、つまりリークされない限り世間に知られることはないのです。
だからこそ透明性の高いブロックチェーン技術をあらゆる業界に応用する必要があると考えます。
取引の状況を確認したい時に全ての情報をチェックできる
ブロックチェーンは全ての取引情報を全てのユーザーが、見たい時に見ることができます。つまり誰でも自由に取引情報をチェックすることができるのです。
食品管理などの情報が改ざんできないので食の安全が確保できる
高い透明性をもつブロックチェーン技術は食品の安全性を保証します。食品業界において消費者から重要視されるのは、安心安全の食品であるかどうかです。自分や大切な家族が口にするものですから、誰がどのように生産したのか知りたいですよね。
そこで改ざんが困難という特性をもつブロックチェーンの活用が最適です。また生産者にとっても食品のクオリティや技術をアピールできるといった利点があります。このような食品へのブロックチェーン活用の取り組みは世界的にも広がりを見せています。
トレース機能によりより信頼性の高い商品を手にすることができる
ブロックチェーンは信頼性の高いトレース機能を有しています。トレースとは追跡する・順にたどって調べるなどの意味をもちます。トレース機能を生産履歴の追跡に活用できれば、消費者は安全が保証された信頼できる商品のみを選ぶことができます。
ブロックチェーンの仕組みのまとめ
近年ビットコインに注目が集まるにつれ、その中核技術であるブロックチェーンもメディアで頻繁に取り上げられることが増えました。最近ではあらゆる企業がブロックチェーン技術を利用するというニュースをよく耳にします。
企業や医療機関や政府など、あらゆる分野に大きな影響を与える技術であることは間違いありません。ブロックチェーンが私たちの身近に感じられる存在になる日もそう遠くないでしょう。しかしまだまだブロックチェーンの仕組みをきちんと理解していない人が多いのが現状です。
私たちの生活を豊かにしてくれるであろうブロックチェーンの、関心を高めるためにもこの記事を書きました。インターネット以来の革命的技術とも言われているブロックチェーンは、まだまだ課題もありますが将来的にあらゆる分野での活躍が期待される素晴らしい技術です。