多くの若者が憧れる職業、エンジニア。その一方で、ブラックな職業というイメージもつきまとうため、エンジニアの離職率は高いとも言われています。なぜそう思われているのでしょうか。そして実際の離職率は、本当に高いのでしょうか。エンジニアの離職率の「本当のところ」を調べてみましょう。
エンジニアは離職率が高いと思われている理由
まずはエンジニアは離職率が高いと思われている理由についてチェックしてみましょう。なぜエンジニアには離職率が高いというイメージがあるのでしょうか。
一つの企業で働き続けようとは思わないから
まず挙げられるのは、エンジニアとして働く人の多くが「終身雇用」を求めていないからという理由です。ひとつの会社でエンジニアとして勤めあげるというイメージを持って働いていないのです。公務員や一般企業とは大きく違っている点と言えますね。
キャリアアップして転職するというイメージの人が多い
では、終身雇用を求めていない人々は、今後どのような青写真を描いているのでしょうか。多くの人は、キャリアアップを狙って、同じ業界の中で転職を繰り返します。Aという会社でまずシステムエンジニアとして働き、そのスキルを利用してもっと大きな企業に勤めます。そこで新たなスキルや資格を取って、さらに稼げる企業に転職したり、独立したりしてどんどんキャリアアップしていこうという上昇志向の人が多いのです。
エンジニアは過酷な仕事だというイメージが浸透しているから
上のキラキラとしたイメージとは真逆ですが、エンジニアはブラックな業界だというイメージが浸透しているからという理由もあります。確かに「帰れない、辞められない」というブラックな企業もありますが、福利厚生がしっかりしており人並みといえる時間に出勤・退勤できる企業もあります。ただ、時間の拘束が長い業種ではあるといえるでしょう。
エンジニアを含むIT業界の離職率
エンジニアを含むIT業界は、本当のところどれくらいの離職率なのでしょうか。離職率が高いというイメージは、果たして正しいものなのでしょうか。実状を見てみましょう。
IT業界全体の離職率
IT業界全体の離職率をチェックしてみましょう。最新のものは平成28年のものです。離職率がもっとも高いのは宿泊業・飲食サービス業です。30%の離職率です。IT業界が含まれる情報通信業は、10.2%。入職率は12.7%なので、決して高い離職率とは言えません。むしろ離職率は低い業界といえます。
(参考:平成28年雇用動向調査結果の概要|厚生労働省)
IT業界の離職率は10.2%と意外と低い
IT業界の離職率が意外と低いことが分かりました。全体的に見ると、もっとも低い複合サービス事業・建設業・金融・保険業に次いで4番目に低いのです。最も離職率が高い宿泊・飲食サービス業と比較すると3分の1という離職率です。
エンジニアの離職率が高い企業は何が悪いのか?
エンジニアの離職率は業界全体で見れば決して高くはないことが判明しました。それはエンジニアが特殊な技能・スキルを必要とする専門職だからと言えます。でも、実際にエンジニアの離職率が高い「企業」は存在します。ではそんな企業は何が悪いのでしょうか。
仕事の割に賃金が低いのが一番の原因
まずは、仕事がきつくて多いわりに、賃金が低い企業であるというのが一番の原因ですね。一見すると賃金はそんなに低いわけではないのに、仕事で拘束される時間が長すぎるので、時給換算すると驚くほど安くなるという企業も少なくありません。
残業代が少なかったり、サービス残業が多かったり、お給料がもとから残業代コミだったりすると実際働いた時の賃金が非常に安くなってしまうので、注意が必要です。
労働時間が他のIT企業よりもかなり多いのが原因
労働時間、つまり会社の拘束時間が長すぎる企業はどうしても人が居つきにくいですよね。働き方改革や過労死が問題視されている現代、「帰れない企業」は大変嫌われます。また時間が不安定な企業も、小さな子どもを育てる家庭には不向きなため、そろそろ身を固めたいというエンジニアは男女ともに転職を考えることが多いでしょう。
今は会社のために働く時代ではなく、自分のため、家族のため、大切な関係性を守るために働くことが当たり前になっている時代なのです。
誰にでもできる仕事ばかりでキャリアが積めない
会社でエンジニアに求める仕事が、多いわりに簡単なものばかりだと、キャリアアップにつながりません。自分のスキルよりも少し高いものにトライしてこそ、スキルに磨きがかかるのです。さらに勉強して資格を取ったり、セミナーで腕を磨いたりという必要も、時間もないような企業では、長くいればいるほど「キャリアアップ」にかける時間が無駄になってしまいます。
エンジニアの離職率が低い企業に勤めるには?
それでは、エンジニアの離職率が低い企業、つまりエンジニアの満足度が高い企業に勤めるためには、どうすれば良いのでしょうか。良い企業の選び方について考えてみましょう。
誰にでもできる仕事ではなく自分しかできない事ができるようになる
誰にでもできるコーディングのような仕事ばかりが山積みになって、先が見えない状態では自分のスキルを磨く時間を捻出することなんてできません。自分しかできない事ができるようになってこそ、自分というエンジニアに価値が生まれ、他のエンジニアとの差別化が図れるようになります。
エンジニア業界で自分しかできない事ができるようになれば、メディアに登場したり、大きなプロジェクトで名前が出るようになります。そうすれば企業側も手放したくないため、賃金アップも見込めるようになるのではないでしょうか。
思い切ってオープン系のエンジニアを目指す
システム開発には、「汎用系」と呼ばれるものと、「オープン系」と呼ばれるものがあります。汎用系システムは従来のシステムで、1台の専用コンピュータですべての処理を行っていました。そのためクローズドとも呼ばれていました。
最近はWindowsを含めた一般のパソコンのOSやソフトウエアを使って、複数のコンピュータでシステムを構築するオープン系が主流になりつつあります。もちろん需要も高まっています。オープン系のエンジニアになるためにはJava言語やPHP、C#、VB.netなどの言語が必要となります。また開発言語はどんどん変化するため、常に学び続けることが必要となります。
プロジェクトマネージャーを目指してみる
プロジェクトマネージャーとは、プロジェクトチームを結成して期日までにITシステムを完成させる役職です。できるだけ簡単に運用できるシステム開発を目指し、必要となる人材や資材をそろえて費用を計算し、それらの確保を行ってプロジェクトを進め、システム完成を遂行することが仕事です。
システムエンジニアとしての実務経験も必要ですし、マネジメントスキル、リーダーシップなどが必要とされる、人をまとめるお仕事です。たくさんのエンジニアや他の人材をまとめ、動かし、システムが完成した際には大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。
エンジニアの中でも上を目指すための資格を取る
エンジニアとしてスキルアップを図るために、いろいろな資格を取ることができる会社は魅力的ですね。一般的には、エンジニアのスキルアップはこうなります。
- プログラマー
- システムエンジニア
- プロジェクトリーダー
- プロジェクトマネージャー
- システムコンサルタント・アナリスト
会社によっては、それぞれのスペシャリストが存在することもあるので、自分が得意とする分野でスペシャリストを目指し、その道のトップを目指すことも魅力的ですね。
エンジニアとしてのスキルを上げる資格
エンジニアとしてのスキルをアップできる資格をご紹介します。働きながらこうした資格を取ることができる企業なら、やりがいもアップしますよね。こうしたスキルを上げるためには、独学のほかに1~3ヶ月でスキルアップが図れるオンラインスクールも存在します。
プロジェクトマネージャー試験
ITプロジェクトを動かすプロジェクトマネージャーとなるための試験です。試験は午前・午後に分かれ、選択式の試験と記述式・論述式の試験を4つ受けることになります。平成29年度の合格率は13.1%。1割ちょっとという狭き門です。毎年4月ころに行われます。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしての登竜門として、基礎的な知識の総まとめの試験として最初に受けておくべき試験です。毎年4月と10月に実施されています。企業や社会システムの課題に、ITを活用した戦略を立案したり、信頼性・生産性の高いシステムの設計・開発・構築を行い、安定的な運用サービスを行うことがエンジニアの仕事です。それに見合うだけの知識・技術を持っているのかを問われる試験となります。基礎的な試験とはいえ、合格率は22.1%と決して侮れません。
応用情報技術者試験
基本情報技術者試験に合格したら、次は応用情報技術者試験がおすすめです。エンジニアとしてのレベルアップを図り、技術はもちろん、管理・経営までカバーする知識や応用力が必要となります。もちろんシステム開発においても高いパフォーマンスが求められます。試験は毎年4月・10月に行われます。こちらも合格率は21.0%程度と高くはありません。
ネットワークスペシャリスト
ネットワークシステムの構築を行うネットワークエンジニアや、インフラ系エンジニアを目指す人のための試験です。目的のための大規模で堅牢なネットワークシステムを構築・運用できる人材を目指します。毎年10月に試験は行われ、合格率は13.6%とやはり狭き門です。
情報セキュリティスペシャリスト
情報処理セキュリティスペシャリスト試験は、情報システムや組織の脆弱性や脅威を評価し、有効な対策を摂ることができる、技術面・管理面双方に優れたセキュリティエンジニア・情報システム管理者のための試験です。高いセキュリティ技術の専門家となるための試験で、春と秋の2回試験が開催されます。14.9%の合格率です。
ITパスポート
ITを活用するすべての人々が知っておくべきITに関する基礎知識が身についているかどうかを確認するための試験で、国家試験です。ネットワークやセキュリティといったITに関する知識はもちろん、財務・法務・経営戦略・マーケティングなどの知識も問われます。非常に多くの人々が受験しており、合格率は5割という、ITの入門試験です。
エンジニアの離職率のまとめ
エンジニアの離職率は、業界としては決して高くありません。でも中には離職率が高い企業も存在します。いわゆるブラック企業で、拘束時間が長いわりに仕事が単調で、スキルアップにつながりません。
エンジニアとして長くしっかり働き、高い賃金とスキルを手に入れられる企業を選ぶことで、自身のスキルアップにもつながります。時間的余裕のある企業で、さまざまなスキルアップ試験にもチャレンジしてみましょう。