エンジニアと呼ばれるIT関連の職業に就くには、大学でコンピューターを専門的に学ぶことが必要だと考えている人は多いかもしれません。
しかし、実際には法学部、経済学部、文学部といった文系学部を卒業してエンジニアとして活躍している人が日本にはたくさんいます。日本で文系エンジニアが多い理由やエンジニアの種類などについて説明します。
文系でエンジニアになるのは難しくはない
文系はコンピューターとはあまり関係のない学問を修めてきたと思われており、就職の時点でも営業や総務・経理などの間接部門に配属されることが一般的だと考えられていますが、実態を考えると文系学部卒でもエンジニアになることは難しくはないようです。
文系でもエンジニアになることが難しくないと考えられるのはなぜでしょうか。
日本に文系エンジニアが多い理由
わが国で文系学部出身のエンジニアが多い理由は以下のような事情があると思われます。
文系の学習を活かす部署がある
例えば、法学部出身者にとっては理論的に文章を構築することは得意でしょうし、経営学部出身者にとってはビジネスのリーダーシップがどういった場面に必要とされるかは学んできたでしょう。
IT企業にとっても、プログラムを書く際の論理的な思考やITプロジェクトを円滑に進めるためのリーダーシップが求められる場面は多々あります。つまり、仕事の内容によっては、文系学部出身者でも問題なく、あるいは理系出身者以上に円滑に、業務を進めることができるのです。
多くの企業が新卒・大卒にこだわり学部は重視しない
日本では就職の時点では、出身大学や新卒かどうか、といった点には企業はこだわりますが、何を学んできたのかをあまり重視しない傾向があります。
ひとつには就職してから専門的な知識を身に付けてくれればよいと考えている企業が大半であり、専門的な知識よりも、社会人としての常識があるかどうか、組織で仕事をしていくうえで問題はないか、やる気はあるか、という点を評価しているように感じられます。
学生時代の専門的な学習内容は、そのままでは仕事にはすぐには役立たない、という思いが根底にはあるのでしょうが、社会ですぐに役立つ実践的な学習を多くの日本の大学ではあまり行っていないのも事実でしょう。
エンジニアの仕事の種類が多い
一口にエンジニアと言ってもその職務内容は幅広く、様々な種類のエンジニアが存在します。
詳細は後述しますが、文系エンジニアでも全く問題なく、むしろプロジェクトマネージャーのように文系でも問題なく仕事を進めることができるような職種もあります。つまり、文系エンジニアとして活躍できる仕事がたくさんあるのです。
就職後にプログラミングを本格的に学んでも遅くない
学生の時点でプログラミングを本格的に学んでいなくても、決して遅いということはありません。社会人になってからプログラミングを学び始めた人はたくさんいます。
プログラミングの学習は素直に課題に取り組むことが重要で、もしかしたら文系の方が砂に水が染み込むように、速く習得できるかもしれません。学部を選択した時には気付かなかったプログラミングのセンスに、就職してから気付くこともあるでしょう。
学問のための学問ではなく、実際の業務に直結する勉強ですので、就職してからプログラミングを学んでも本人のやる気次第と言えるでしょう。
エンジニアの種類
エンジニアには以下のようなたくさんの種類があります。主にどういった仕事を担当しているのか説明します。
システムエンジニア
システムエンジニアは、システム開発で設計、開発、テスト、までを一貫して計画して、進めていく役割を担います。主な仕事はクライアントとの打ち合わせを重ねて、要求を理解し、システムの仕様を確定していくことです。
システムエンジニアにとって必要なスキルは、クライアントの業務に関する知識、コミュニケーション力、設計書作成のための文章力・伝達力、使用する技術(プログラム言語)に対する知識、などです。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、これまで経験を積んできたエンジニアが昇格するエンジニアのリーダーで、エンジニアを統括する存在です。プロジェクト単位における総監督にあたることが多く、プロジェクトの予算や人員の管理を実施します。
プロジェクトに関する人員や費用などの見積もりを行うためのエンジニアとしての豊富な知識と経験が求められるだけではなく、円滑にプロジェクトを推進するためのマネジメント業務(進捗管理レポートの作成、報告会議の開催など)に対する幅広い知識が必要です。
プロジェクトマネージャーに必要なスキルは、管理能力、リーダーシップ、コミュニケーション力、幅広い技術や業務に関する知識、などです。
プログラムマネージャー
プログラムマネージャーとは、現場責任者であるプロジェクトマネージャーを束ねて管理・監督する立場の存在です。
プログラムマネージャーはプロジェクトマネージャー以上に、関与している案件の進捗を円滑に進めることに責任を負うことになり、十分なマネジメント能力を有していることが求められます。
カスタマーエンジニアリング
カスタマーエンジニアリングとは、システム全体の安定的な稼働を維持するために、障害が発生した場合には被害を最小限に抑え、品質管理や継続的な改善といった高い信頼性を供与する技術者のことを言います。
カスタマーエンジニアリングでは、ハードウェアの故障に対応するために電気に関する知見が必要とされます。
データアナリスト
データアナリストとは、分析領域で活躍するエンジニアです。データアナリストには、コンサル型とエンジニア型があります。
コンサル型データアナリストとは、企業が直面している課題やトラブルを解決するために、データ解析を進めて、具体的な解決策を提案する仕事を行っています。
一方、エンジニア型データアナリストとは、データ分析をメインで進めている点は、コンサル型データアナリストとほぼ同じですが、データマイニングを活用し、サービスやプログラムの利用ユーザー層の分析や利用者の行動特性などの規則性を見つけるのが仕事です。
テクニカルライター
テクニカルライターとは、専門分野の技術情報において、専門外の人に対しても分かりやすく伝えるための技術的な文書を書く人のことです。具体的には、専門分野における技術者向けの手順書、仕様書、製品の利用者向けにメーカーが作成する取扱説明書、などを作成する仕事を行っている人です。
文系エンジニアは海外でも通用するのか?
このように日本では文系エンジニアでも活躍できる場面がありますが、海外でも文系エンジニアは活躍しているのでしょうか。
一般のIT企業ならコミュニケーション重視の仕事で採用がある
日本の場合と同様に高いコミュニケーション能力やリーダーシップを発揮できる人であれば、一般のIT企業においては採用される可能性があります。ただし、その場合は、コミュニケーション能力を重視している部署であれば、という限定条件が付くかもしれません。
ITの中枢であるシリコンバレーでは難しいが無理ではない
一方で、先進的なIT企業が多く存在しているシリコンバレーでは、文系エンジニアの採用は厳しいかもしれません。ひとつには、採用されるのは、いかに専門的なエンジニアとしての能力を有しているのか、といった部分が最も評価されるからです。
専門的かつ実践的な教育を実施している海外においては、文系エンジニアの採用は厳しいものがあると考えられます。
海外では学部や経験値がより重視される傾向にある
ただし、海外においてはどの学部出身かということよりも、これまでの実績や経験を採用においては重視します。たとえ文系出身であっても、これまでの経験が高く評価されるという自信があれば、海外企業にチャレンジしてみても良いかもしれません。