個人事業主の場合、自分に対して退職金を支払うことができないというデメリットがあります。小規模企業共済は、小さな事業を展開している個人事業主や会社役員向けの共済制度です。小規模企業共済のメリットとデメリット、加入できる条件など知っておきたいポイントをご紹介していきます。
小規模企業共済の特徴
小規模企業共済は、個人事業主や小規模な法人の役員向けの共済制度です。小規模な個人事業主や法人の役員が退職したり廃業した際に解約をすると、掛け金に応じた共済金を受け取ることができます。
個人事業主は自分に対して退職金を支給ができないため、共済の制度を利用して退職金の代わりとする方もいます。受け取るときに一括か分割かを選べるというメリットがあります。退職金のようにするか年金のようにするか、自分のライフプランに合わせて選べることができます。
小規模共済金の5つのメリット
小規模共済金は共済金を受け取れるだけではなく、個人事業主にとってメリットとなる点もあります。事業の規模が大きくなると、小規模共済に加入することができなくなってしまいます。起業した方で小規模共済金に興味がある方は、早めに確認をするのがおすすめです。
最大120%還元
掛け金の納付期間によって支給額が変わり、最大で120%相当の金額を受け取ることができます。多くの共済金を受け取るためには、納付期間が重要です。自分が共済金を受け取りたい時期を考えて、逆算して小規模共済に加入をするのが大切です。
節税対策
小規模共済金の掛け金は、個人事業主の場合全額が所得控除の対象となります。掛けた分だけ節税に繋げることができます。共済金の積み立てを続けていくことで、税金を抑えられるというメリットがあります。
貯蓄のような感覚で積み立てができるため、老後の生活資金として備えることにも向いています。小規模企業共済を利用しない場合より、共済金として積み立てをしていく方が節税できます。税金の負担を軽くしつつ、資金を増やしたい方には小規模企業共済がおすすめです。
税負担が軽くなる
小規模共済は個人事業主が解約し共済金を受け取る際には、退職所得として支給されます。退職所得は事業所得と比べて、税負担が大幅に軽減されるメリットがあります。
<税負担の計算>
- 事業所得:収益-費用=所得
- 退職所得:(退職金-控除額)×1/2=所得
退職所得の場合は、控除額や1/2かけがあるため課税対象になる所得が小さくなることが特徴です。事業所得の一部を掛け金として積み立て、共済金を退職時に受け取った方が節税効果が高くなるメリットがあります。
積立金の額を選べる
小規模企業共済は掛け金を月1,000円~70,000円の間で自由に決めることができます。金額は500円刻みで設定することができ、無理のない範囲で掛け金を積み立てていくことができます。
小額で毎月積み立てていけるメリットがあるため、個人事業主として開業したばかりの方におすすめです。掛け金は減額や増額を自分で決めることができるため、事業収入に合わせて変更ができます。掛け金を前納すると一定割合の前納減額金を受け取れるため、前納で納付をした方がより負担が少なくなります。
資金調達の手段としても利用できる
小規模企業共済には契約者貸付制度があり、積み立てている金額の範囲で共済から資金を借りることができます。万が一のことがあった場合の、選択肢の一つにできるという安心感もあります。
一般的な貸付以外にも、低金利で資金を借り入れることができるというメリットがあります。資金繰り以外に、傷病や災害で事業に影響があった場合なども、小規模企業共済から低金利で資金を借りられます。
<小規模企業共済の貸付制度>
- 一般貸付制度:万が一のときの資金の借入、利率年1.5%
- 緊急経営安定貸付け:資金繰りが著しく困難なときの借入、利率年0.9%
- 傷病災害時貸付け:傷病や負傷で入院、災害被害を受けたときの借入、利率年0.9%
- 福祉対応貸付け:自宅のバリアフリー化、福祉機器購入の借入、利率年0.9%
- 創業転業時・新規事業展開等貸付け:新規開業、転業するときの借入、利率年0.9%
- 事業承継貸付け:事業用資産または株式等の取得をするときの借入、利率年0.9%
- 廃業準備貸付け:個人事業の廃業、会社の解散を円滑に行うための借入、利率年0.9%
月に2万円を5年間積み立てていた場合は、120万円までを借りることができます。事業が危機に陥らないようにリスク管理をすることは大切なので、事前に資金繰りや資金調達の計画を立てる必要があります。
小規模共済金の2つのデメリット
小規模企業共済金は個人事業主にとってメリットとなることも多いですが、注意をしておかなければならない点もあります。加入を検討している方は、メリットとデメリットを両方とも把握しておくと安心です。
元本割れのリスクがある
小規模企業共済金のデメリットとしては、元本割れをする可能性が挙げられます。掛け金を納付した月数が240ヶ月(20年)未満の場合、元本割れになることが運営元の独立行政法人中小企業基盤整備機構のホームページに掲載されています。
加入してから数年で解約してしまうと、元本割れの金額の方が高くなり節税効果がなくなってしまいます。少なくとも20年は加入して掛け金を納付する必要があるため、加入をする前に検討をしておきましょう。
共済金受け取り時に課税される
掛け金を積み立てるときには所得控除として節税することができますが、受け取る共済金には課税がされるというデメリットがあります。共済を解約して共済金を受け取った年に課税がされるので、思ったよりも少なかったとならないように備えておくことも必要です。
共済金を受け取った年には税負担が大きくなりますが、小規模企業共済金を利用しないよりは税金を抑えることができます。税負担がいつ増えるのかを知っておくだけでも、安心して自分のライフプランを立てられます。
小規模企業共済に加入するための条件
小規模企業共済は、あくまでも小規模な事業を展開している個人事業主や会社役員向けのものです。誰でも加入できる訳ではなく、条件がいくつかあります。どのタイミングで加入をすればよいのか知っていないと、加入をしたくてもできないという事態になってしまいます。
<小規模企業共済の加入できる個人事業主と会社役員の条件>
- 建設業、不動産業など:常時使用する従業員数が20名以下
- サービス業(宿泊業、娯楽業以外)など:常時使用する従業員数が5人以下
従業員が少ない個人事業主や会社役員が、小規模企業共済に加入することができます。個人事業主1人につき2人までの共同経営者も、小規模企業共済に加入できます。業種により従業員数の条件は異なりますが、小規模な企業のみが利用できる制度です。加入を検討している場合は、事業展開が大きくなる前に加入をする必要があります。
【まとめ】創業したら早めに加入しよう!
小規模企業共済は、起業したばかりの個人事業主や中小企業の役員にはメリットのある制度です。掛け金が所得控除の対象になるので、節税をしながら毎月の積み立てができます。積立金を自分で決められるため、無理のない範囲でも積み立てがしやすいというメリットがあります。
元本割れや共済金受取時の課税のデメリット、資金繰りや税金対策について事前に税理士に相談しておくと大きな失敗を防ぐことができます。個人事業を始めたばかりの方は、専門家のアドバイスを聞いておくと知識やリスク管理もしやすくなるためおすすめです。
小規模企業共済に加入をするときは、事業が大きく展開をする前でなければいけないです。加入の検討をしている方は、早めに加入の申し込みをする必要があります。