私たちが働いていく上で外せないのが、“扶養”です。しかし意外と理解されていないのが、扶養には大きく分けて税金の扶養と社会保険の扶養の2種類があるということです。
フリーランスはアルバイトやパートなどの給与所得者とは考え方を変えなければいけません。というのも、何も考えないで稼いでしまうと扶養から外されてしまい、税務署などの通知で延滞税と共に多額の税金を追納しなければいけなくなるからです。
そこで今回は、フリーランスが扶養になるために確認しておきたい点や見落としがちな点について紹介します。
フリーランスが扶養になるために確認したい4つの項目
フリーランスが扶養になるために確認しておきたい項目としては、4つあります。これはフリーランスだけでなく給与所得者でも知っておきたいことでもあります。
近年ではフリーランスが働く時代になりつつありますが、実際にフリーランスを扶養と結びつけるとどのような項目を確認しなければいけなくなるのでしょうか。
所得税
まず1つは、所得税です。所得税については、おそらくあなたもこれまでに一度は耳にしたことがあるでしょう。実は、所得税は給与所得者とフリーランスでは大きく違うのです。
よく耳にするのが、103万円の壁というものです。これは、給与所得者は年収が103万円以下であれば所得税がかからないことに由来します。所得税の基礎控除額である38万円と給与所得控除額の最低額である65万円を足した額が103万円です。つまり、給与所得者の年収が103万円以下であれば課税対象となる所得額が0円になり所得税がかからないというわけです。
それに対してフリーランスの場合、収入から経費を差し引いた金額が所得になります。フリーランスや個人事業主には給与所得控除が適用されないので、年間の合計所得額が38万円以下であれば所得税はかかりません。そのため、給与所得者と比較すると扶養に入るのが難しいと思うかもしれません。しかし、所得税を青色申告という方法で申告し認められれば青色申告特別控除として最大65万円を所得額から差し引けます。個人事業主であるフリーランスは青色申告を利用することで扶養に入る要件を充たしやすくなります。
関連記事:個人事業主の所得税の算出法と税金対策するための控除11項目
所得税(青色申告と白色申告の違い)
2つ目の項目は、所得税の申告方法です。個人事業主であるフリーランスが利用できる所得税の申告方法には青色申告と白色申告の2つがあります。
青色申告は不動産所得、事業所得、山林所得のある人が利用できる申告方法です。白色申告は給与所得でも事業所得でも所得の種類に関わらず利用できる申告方法です。青色申告と白色申告との大きな違いは、控除があるかないかです。例えば、青色申告には最大65万円の青色申告特別控除がありますが、白色申告にはありません。他にも青色申告には仕事を手伝っている家族や親族に支払った給与を経費にできる青色事業専従者給与や損失が発生する場合に一定額を必要経費に計上できる貸倒引当金などの特典があります。
ただし、青色申告を利用するには事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。その上で複式簿記による帳簿付けを行い、貸借対照表と損益計算書を作成して申告書と共に提出しなければなりません。白色申告は単式簿記による簡易的な帳簿付けで構いません。以上のように、白色申告には控除がないものの帳簿付けや申告書の作成が比較的容易というメリットがあります。逆に、青色申告には帳簿付けや手続きが面倒ではあるもの各種控除が受けられるというメリットがあります。
社会保険料(健康保険料)
3つ目に確認しておきたいのが、社会保険料における健康保険料です。健康保険の扶養に入ることができるのは基本的に年間収入が130万円未満の人です。
しかし注意したいのは、健康保険の扶養に入る要件が加入している健康保険組合によって違う場合があるということです。具体的には年収の考え方によります。例えば、協会けんぽで被扶養者として認定される収入の基準は「年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1未満」ですが、大塚製薬健康保険組合の基準は「年間収入が130万円未満かつ連続する3か月の平均収入月額が108,334円未満」です。
大塚製薬保険組合の場合、さらに年収の考え方として「自営業(農業・漁業等の従事者を含む)をしている方は、確定申告書などの総収入から、必要最小限の経費を差引いた収入額で判断します」とあります。基本的に年収130万円未満ではあるのですが、このように保険組合によって考え方が微妙に違っていることもあるので、仮に配偶者の扶養に入るとすると、配偶者が加入している健康保険組合の基準をしっかり確認することが必要です。
社会保険料(年金)
そして4つ目は、社会保険料における年金です。年金は収入によって負担が大きく異なってきますが、年間収入が130万円未満であれば国民年金「第3号被保険者」扱いになり保険料の負担はありません。
しかし万が一扶養を外れると、国民年金「第1号被保険者」に変わります。この被保険者になると、月額15000円前後の保険料を支払わなければいけなくなってしまいます。
年金や健康保険料は切って離すことのできない存在でもあるので、フリーランスだけでなく給与所得者でも上手に収入を得ながらやりくりしていくことが重要になります。
フリーランスの配偶者控除と配偶者特別控除について
では次に、ここではフリーランスの配偶者控除と配偶者特別控除の違いについてお話ししていきます。所得税と共に知っておきたいのが配偶者控除と配偶者特別控除ですが、これについても配偶者がいるフリーランスの人はよく知っておく必要があります。
では具体的に、フリーランスの配偶者控除と配偶者特別控除にはどういった特徴があるのでしょうか。
配偶者控除
まずは配偶者控除です。配偶者控除は、年間合計所得が38万円以下(令和2年以降は48万円以下)の場合に受けられる控除です。これは給与所得者で考えると、年間収入が103万円以下であった場合を指します。
配偶者控除と配偶者特別控除に関しては平成29年に改正されたのですが、配偶者控除については従来と同様の扱いとなっています。
配偶者特別控除
そしてもう1つは、配偶者特別控除です。年間の合計所得が38万円を超えているため配偶者控除を受けられない場合でも、所得金額に応じで最大38万円の控除を受けられます。次の表は平成30年分と令和元年分の配偶者特別控除額を示しています。なお、令和2年分以降の控除額については国税庁の公式サイトを参照ください(国税庁「No.1195 配偶者特別控除」)。
(平成30年分・令和元年分)
例えば、年間合計所得が38万円超85万円以下のフリーランスの方(妻)が年間合計所得900万円以下の納税者(夫)の扶養に入った場合、納税者本人(夫)の所得から38万円を控除することができます。これは給与収入で考えると、103万円超から150万円以下となっています。
この際に受け取ることができる控除額は38万円ですが、よく考えると仮にあなたの年間給与が900万円未満であれば、配偶者の年間給与が150万円以下だと38万円の控除を受けることができるというのです。
配偶者がいる人の中でもしもフリーランスを目指す人がいるのであれば、こうした配偶者控除や配偶者特別控除については理解しておくと良いでしょう。
フリーランスの扶養で見落としがちな3つのポイント
それでじゃ最後に、ここではフリーランスの扶養で見落としがちなポイントを3つ紹介します。フリーランスだけでなく、給与所得者にも確認しておきたい扶養についてはなんとなく理解できたはずです。
しかし、実際にはフリーランスの扶養を受ける際に見落としがちなポイントというのがあります。では一体、どのようなポイントがあるのでしょうか。
「見込み」の収入額で考えよう
まず1つ目に挙げられるポイントは、見込みの収入額で考えるということです。これはあなたが年間でどれくらいの所得を得る見込みがあるかで、扶養から外される可能性が出てくるということにも繋がります。
というのも、仮にあなたが年間で130万円以下といっても、実際の所得ではなくあなたの所得に対する傾向を見て判断されることがあるからです。例えば1月から3月の収入が13万円ほどであった場合だと、年収が130万円を超えてしまうと判断されてしまうというのです。
フリーランスで所得を得ようと考えているのであれば、まずは見込みの収入額で考えることが大切になってきます。
配偶者控除よりも「配偶者手当」について考えよう
2つ目は、配偶者控除よりも配偶者手当について考えるということがポイントになります。配偶者手当というのを簡単に説明すると、配偶者がいる給与所得者に対する会社からの支給手当のことを言います。
実は、年間所得が103万円以上になった場合夫の給与にある会社からの補助である配偶者手当がなくなってしまうことがあるのです。実際に配偶者手当は配偶者の収入が103万円以上と見なされてしまった時点でその対象から外す会社が多いので、事前に確認しておきたいものです。
住民税についても知っておこう
そして最後3つ目は、住民税についても知っておくということです。住民税というのは、都道府県や市町村に納める税金のことです。
住民税が非課税になるラインは市町村によって異なってくるのですが、基本的に住民税が非課税になるのは所得が28万円から35万円の範囲内であると言われています。フリーランスで所得を得ようと考えているのであれば、こうした住民税についても知っておく必要があります。
フリーランスで扶養されたいなら収入を調整しよう
フリーランスと給与所得者では控除される扶養の額が異なることがわかりました。実際に給与所得者では103万円以下だと扶養を受けることができるのですが、フリーランスになると年間所得が38万円以下に調整する必要があります。
もしもあなたが今後フリーランスとして収入を得ながら扶養を受けようと考えているのであれば、収入を調整しながら働くことが大切になります。ぜひ今回のお話を参考に、フリーランスとしての働き方を変えてみてはいかがでしょうか。