消費税は私たちの生活にもっとも密着した税金のひとつと言えるでしょう。ちょっとした買い物をしても、消費税がかかってきますよね。また税率アップのニュースも国民最大の関心事のひとつとなっています。
年度末の確定申告でも、消費税は大きなポイントになります。個人事業主は、クライアントから売り上げを支払ってもらう時に、消費税も預かっています。確定申告の際はその金額を申告し、税金として納付する必要があるのです。
そもそも消費税とは?
そもそも消費税とは、どういった税なのかをおさらいしてみましょう。世界にはデンマークのように消費税25%という国家も存在しています。
商品の代金に含まれる税金の事
消費税は、私たち国民の消費活動に対して、公平に課せられる税金です。「消費」は物を買うだけではなく、サービスを受ける場合も含まれます。日本では1989年4月から3%の消費税が導入されました。その後5%への引き上げを経て、現在では8%となっています(2019年9月時点)。
販売者が国の代わりに徴収する税金の事
消費税は、販売者が商品代金やサービス料金と一緒にいったん受け取ります。その後で、収入のうち消費税はどれくらいの額になるのかを計算し、確定申告で申告します。もともと消費税はお店や個人事業主の収入とは異なり、国の税金なので、一度は受け取っても国に返さなければなりません。
消費税は3月31日が納付期限
消費税は、確定申告に合わせて国に支払います。納付期限は3月31日になります。確定申告に誤りなどがあると、どんどん遅くなってしまうので、納付期限も合わせて確定申告の準備は早めにスタートしておきましょう。
フリーランスが消費税を払う4つの条件
これからフリーランスとして起業するという人にとっては、所得税や固定資産税に加えて「消費税も払わなければならないの?」と不安になってしまいますよね。でも、消費税を支払うフリーランスには、4つの条件があるのです。
全てのフリーランスが消費税を払う必要は無い
全てのフリーランスが消費税を払う必要はありません。フリーランスが消費税を払う条件を満たしていなければ、特に払わなくてもよいことになっています。 また開業してから2年間は、消費税を納付する必要のない「免税事業者」として扱われるので、基本的に消費税を払う必要はありません。
年収が1000万円以上になったら納税しなくてはならない
また、年収が1000万円を超えなければ、開業してから2年以上経った個人事業主でも消費税を払わずに済みます。しかし年収が1000万を超えるようになったら、免税事業者ではなくなります。その場合は、消費税を納付しなければなりません。
前年の1月1日~6月30日の課税売上高が1000万円をこえている
さらに、【特定期間の判定】という条件もあります。これは、確定申告が行われる前年の1月1日~6月30日、つまり年の上半期の課税売上高が、1000万円を超えている場合です。さらにこの1月1日~6月30日の給与等の支払金額も1000万円を超えると、その翌年の確定申告で課税事業者となり、消費税を支払わなければなりません。
上半期の売り上げと給与等支払金額、双方が1000万円を超えた場合に、課税事業者となります。いずれかが1000万円未満であれば必要ありません。
また個人事業主の場合、従業員がいない場合は、給与を支払う必要がありません。そのため、一人で仕事を請け負っている個人事業主は、特定期間の課税売上高が1000万円を超えた場合、給与がどうなるかの判定次第で免税事業者になれる可能性があります。
消費税課税事業者選択届出書を提出している
消費税課税事業者選択届出書は、免税事業者が課税事業者になるために税務署へ提出する書類です。 免税事業者は消費税を支払う必要がありません。それなのに、なぜわざわざ課税事業者になるための手続きをするのか、不思議ですよね。実は、消費税の納税額をゼロにして節税するよりも、課税事業者として消費税を支払った方が得をするケースがあるからなのです。
それは、輸出事業者です。輸出事業者は、仕入税額控除という控除を適用すると、消費税額の還付が受けられるというメリットがあります。つまり、輸出業者の場合、納める消費税がゼロ円のままだと、それ以上の節税効果はありません。しかし、課税事業者選択届出書を提出することで、仕入れにかかった消費税が還付されるため、金額はプラスになります。
フリーランスが消費税を請求するには?
フリーランスで仕事をする場合、クライアントやお得意様に消費税を請求するには、どうすれば良いのでしょうか。
フリーランスは外税を請求するのが難しい理由
フリーランスで仕事をしていると、年収1000万円未満の場合は消費税を納税する必要がない、ということはご紹介しました。 消費税を国に還付する必要がないのに、顧客から消費税を貰うことは、そもそも違法にならないのでしょうか。 答えは【ならない】です。消費税を国に返さなくてもよい免税事業者であっても、顧客から消費税をもらってOKなのです。
この消費税はどこへ行ってしまうかというと、そっくり事業者の収入になります。所得が増えるので所得税はアップしますが、収入が増えることには変わりありません。しかし、「本来国税であるはずの消費税を、返す必要がない自分がお客さんから貰う」ということは、ちょっと後ろめたい気持ちがするものですよね。
また相手がそのことを知っている場合もあります。相手も個人でWEBディレクターなどをしている場合、消費税のからくりを熟知しているはずだからです。そうなると、ますます「この金額に消費税は含まれません。外税で頂くことになります」と伝えるために、かなりの勇気が必要になります。そのため、フリーランスが外税を請求することが難しいと言われているのです。
見積を行う段階で消費税の話をしてみる
外税で消費税がかかるということを、クライアントに伝えにくいと感じる人は多いかもしれませんが、最初に見積もりを行う段階で、さらりと消費税の話をしてみましょう。 もしこれから仕事が軌道に乗って、1000万円を超える売り上げをたたき出した場合、消費税を国に納めなければなりません。
今は「どうせ消費税を払う義務はないし……」と思って内税にしていても困らないかもしれません。いずれ消費税を払わなければならなくなったとき、顧客の払うべき消費税を、全部自分で負担しなければならないことになります。
売り上げが1000万円を超えたというごく内輪の事情で、突然外税にしても、やはり相手に伝えにくいですよね。そういった事を考えると、最初から外税で価格を設定し、見積もりを行う段階でクライアントにもその点を伝えると良いのではないでしょうか。
税率が変わったら再度話をする
日本では、じりじりと税率が上がってきました。今後も増税があるかもしれません。そんな時も、伝えにくく感じてしまうかもしれません。 しかし税率が変わる段階で、多くの人が増税について興味を持っているので、逆にその機会を逃さず、再度「税率が変わったので、こちらでも外税が変わります」という話を伝えると良いでしょう。
簡易課税制度と利用方法について
個人事業主の消費税納税には、簡易課税制度という制度も関係してきます。こちらも知っておくと非常に便利なので、利用方法をチェックしておきましょう。
課税売上高が5000万円以下の事務負担軽減のための制度
簡易課税制度とは、中小事業者の事務負担の軽減のために、簡易化された仕入れ控除額の計算を認める制度です。一般的に、消費税を計算する際は、顧客から預かった税額から、支払った税額を控除しなければなりません。この計算はとても面倒で、個人事業主など中小事業者にとっては大きな負担となります。ひとりで切り盛りしているフリーランスの場合、本当に厄介ですよね。
簡易課税制度とは、この面倒な計算の手間を軽減するための制度です。届け出をすると、適用されます。
届け出をすれば簡素化した仕入控除税額の計算ができる
届け出をするには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していることが前提になります。前々年の課税売上高が5000万円以下の中小事業者が対象です。 届け出を行うと、課税売上等にかかわる消費税額(売り上げにかかる税金)の一部を支払った税額とみなして計算することが可能になり、二度手間を省くことができるようになりました。
つまり、この制度がなければ預かった消費税と支払った消費税を、消費税を支払った取引すべてで計算しなければならないことになります。 事務的な負担が大きく軽減される制度ですので、消費税を支払うべき1000万円以上の売り上げを誇る事業者になったら、検討してみましょう。
【まとめ】消費税も制度を活用して節税しよう
消費税は、意外に感じるかもしれませんが、1000万円を超える利益が出なければ支払う必要が発生しません。しかし、支払う必要がなくても、消費税を顧客からもらうことは許されています。いずれ1000万円を超える時のためにも、消費税は外税でもらうようにしておきたいですね。
また消費税を支払わなければならない立場になったとしても、計算を簡素化できる制度もあります。こうした制度を活用して、消費税も制していきましょう。