フリーランスになると様々な税金の処理を自分でやる必要が出てきます。その中のひとつに個人事業税があります。この記事では、数ある税金の中からフリーランスの方に関係の深い個人事業税に焦点を当て、個人事業税とは何なのか、どんな人が納めなければならないのか、どのように税率を決定するのかをまとめます。フリーランスになったけど個人事業税って払わなきゃダメなの?と疑問に思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
個人事業税とは?
まずは、個人事業税とはどんなものなのか、基本的なことをまとめます。
個人事業税は地方税の一つ
個人事業税は、地方税法で定められた税金のひとつです。事業を営む個人に課され、事務所や事業所が所在する都道府県に納めます。
全ての個人事業主が課税されるわけではない
個人事業税は、個人事業主を対象としていますが、全ての個人事業主に課税されるわけではありません。法律で定められた事業(法定業種)に対してのみ課税されます。とは言うものの、現状では70の業種が法定業種となっており(地方税法第72条の2、地方税法施行令)、ほとんどの事業が当てはまります。
個人事業税はどのようにして決まるのか?
次は、個人事業税を納付するまでの一連の流れを見てみましょう。
まずは自分が納税義務があるのかを確かめる
まずは自分が個人事業税を納付する義務があるのかを確かめます。個人事業税は、法定業種の事業を営んでいる個人事業主が納税の対象となります。法定業種は第1種から第3種までの3つのタイプに分けられ、第1種事業は主に商工業、第3種事業は資格や技能、知識によって利益を得る事業が該当します。また、これらの事業に類するものとして政令で定めたものについても対象になります。
自分の事業が個人事業税の法定業種に該当するかわかりにくい人は、事業所のある都道府県に問い合わせると確実です。なお、各法定業種の具体例については、「個人事業税の法定業種と税率は3タイプ」に挙げているので参考にしてください。なお、個人事業税には事業主控除があり、所得から290万円が差し引かれます。そのため、前年の事業所得が290万円以下であれば納税義務は発生しません。
義務がある場合は該当する都道府県に申告書を提出する
自分の事業が法定業種に該当し、かつ前年の事業所得が290万円を超えている場合、個人事業税の申告をする必要があります。毎年3月15日までに事業所が所在する都道府県に個人事業税の申告書を提出します。
ただし、所得税の確定申告をした場合や住民税(都道府県・市町村民税)の申告をした場合には、個人事業税の申告をする必要はありません。なお、年の途中で廃業した場合は、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人の事業税の申告をしなければなりません。
納税額が決まったら知らせがきて納税を行う
所得税の確定申告や個人事業税の申告をすると、申告した前年の所得額から個人事業税が決定します。個人事業税の納税額が決まったら、大体8月頃に都道府県から納税通知書が送付されてきます。その通知によって各自納税を行います。なお、年の途中で廃業した場合は、通知書の送付時期や納付期限が異なります。
フリーランスの個人事業税はいくら?
フリーランスの個人事業税はどのようにして決まるのでしょうか。詳しい計算方法を解説します。
事業内容で税率は変わる
個人事業税は、事業内容によって税率が変わります。法定業種は3つの区分に分けられており、区分ごとに税率が決められています。そのため、自分の事業がどの区分に入るのか知った上で税率を確認する必要があります。具体的な税率については、「個人事業税の法定業種と税率は3タイプ」に挙げるので参照してください。
前年の所得に決まった税率をかける
個人事業税の金額は、前年の所得から各種控除を差し引いた金額に決められた税率を掛けて算出します。
各種控除
個人事業税には、以下の控除が適用されます。
- 損失の繰越控除
- 被災事業用資産の損失の繰越控除
- 事業用資産の譲渡損失の控除
- 事業用資産の譲渡損失の繰越控除
- 事業専従者給与(控除)
- 事業主控除(年290万円:開業後1年未満の場合は月割)
所得の算出方法
以下のケースを基に個人事業税を計算してみましょう。
- 飲食店経営
- 前年の事業収入1,500万円
- 必要経費900万円
- 青色事業専従者給与150万円 の場合
事業所得:年収 - 必要経費(専従者給与含む)
→1,500万円 - (900万円 + 150万円) = 450万円
各種控除:事業所得 - 事業主控除
→450万円 - 290万円 = 160万円
個人事業税:控除後の事業所得 × 税率(第1種事業の場合5%)
→160万円 × 5% = 8万円
上記の例の場合、8万円が個人事業税となります。
個人事業税の法定業種と税率は3タイプ
次は、個人事業税の法定業種と税率について紹介します。法定業種は第1種から第3種までの3つの区分に分けられ、それぞれの税率は以下の通りとなっています。
第1種事業(37業種)は5%
第1種事業は主に商工業に入る事業で、具体的には以下の事業が挙げられます。第1種事業の税率は5%です。
物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(第3種事業以外のもの)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業
(地方税法第72条の2第8項、地方税法施行令第10条の3)
第2種事業(3業種)は4%
第2種事業には以下の3つの業種が入ります。第2種事業の税率は4%です。
畜産業、水産業、薪炭製造業
(地方税法第72条の2第9項、地方税法施行令第12条)
第3種事業(30業種)は5%(うち2業種は3%)
第3種事業は資格や技能、知識によって利益を得る事業で、具体的には以下の事業が挙げられます。第3種事業の税率は5%です。ただし、第3種事業のうち、あん摩、マツサージ又は指圧、はり、きゆう、柔道整復その他の医業に類する事業および装蹄師業については3%です。
医業、歯科医業、薬剤師業、あん摩、マツサージ又は指圧、はり、きゆう、柔道整復その他の医業に類する事業、獣医業、装蹄師業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業
(地方税法第72条の2第10項、地方税法施行令第14条)
フリーランスの個人事業税はいつ納める?
最後に、個人事業税の納付時期と納付方法についてまとめます。
2分の1を一期 8月に納める
個人事業税は、大体8月頃に納税通知書が送付されてきます。その通知書に従い、8月31日までに一期分として2分の1の金額を納めます。ただし、税額が1万円以下の場合は、第一期に全額を納めることになっています。
残りの2分の1を二期 11月に納める
残りの2分の1の金額は、二期分として11月30日までに納めます。納付方法は、都道府県税事務所の窓口、銀行などの金融機関、コンビニエンスストア、口座振替のほか、クレジットカードやATMでの納付も利用できる場合があります。
【まとめ】フリーランスの個人事業税は収入で変わる
今回はフリーランスが納める個人事業税についてまとめました。個人事業税はフリーランスになったら必ず納める税金というわけではなく、事業内容によって納めなければならない人と納める必要のない人がいます。そして、個人事業税の金額は収入によって変わります。自分が個人事業税の納税義務者なのか、いくらぐらい納めなければならないのか、ぜひこの記事を参考に計算してみてください。