フリーランスで仕事を始めると、サラリーマン時代には総務や経理を担当する人が行っていた仕事ことまで自分で手続き・処理する必要が出てきます。国民健康保険もその一つです。
日本国民なら加入必須の国民健康保険ですが、高いと感じているフリーランスの方は多いのではないでしょうか。今回はフリーランスの国民健康保険に焦点を当て、具体的な保険料や安くする方法をまとめます。ぜひ参考にしてください。
そもそも国民健康保険や組合って何?
冒頭でも触れたとおり、日本国民は皆なんらかの健康保険に加入することが義務付けられています。では、そもそも国民健康保険や組合とはいったい何なのでしょうか。まずは、国民健康保険と国民健康保険組合についてまとめます。
国民健康保険は国の医療保険の事
国民健康保険とは国の医療保険制度の一つです。日本では国民皆保険制度を導入し、国民全員を公的な医療保険によって保障しています。そのため、日本国民は何らかの医療保険に加入する義務があります。その医療保険のうち、主に自営業者や年金生活者などのために用意されているのが国民健康保険です。以下の図は、日本の医療保険制度の体系を表しています。赤枠でくくった部分が国民健康保険です。
国民健康保険の運営主体である保険者には、区市町村と国民健康保険組合の2種類あります。自営業者であるフリーランスは、これらの保険者のどちらかの国民健康保険に加入することになります。
地域ごとに個人事業者が加入できるのが国民健康保険組合
国民健康保険の保険者の一つである国民健康保険組合とは、同種の事業や同種の業務に従事する人たちで作られる団体です。例えば、医師や歯科医師、薬剤師、建設関係の従事者、市場従事者や食品関連の従事者などが都道府県の認可を受けてそれぞれ組織する組合があります。
国民健康保険組合は主に都道府県ごとに組織されています。数は少ないものの全国規模の組合もあります。加入資格については組合ごとにそれぞれ要件があるので、組合に問い合わせるなどして確認する必要があります。また、全国国民健康保険組合協会の公式サイトに各健康保険組合へのリンクが掲載されています。
⇒全国国民健康保険組合協会「国民健康保険組合へのリンク[業種選択]」
フリーランスの国民健康保険は高い?
国民健康保険が高いと感じているフリーランスの方もいるのではないでしょうか。なぜ高いと感じるのか見てみます。
居住地の自治体によって保険料が変わるから
フリーランスの方は、区市町村が運営する国民健康保険に加入していることが多いと思います。しかし、同じ国民健康保険とは言っても、区市町村によってその保険料は異なります。以下の図は、東京都の市町村の国民健康保険税(料)の率などを表したものです。
【出典】東京都福祉保健局「平成31年度国民健康保険税(料)率等の状況」
例えば、上の図で25番の立川市と26番の武蔵野市を比較してみましょう。具体的な計算方法については、「フリーランスはいくら払う?国民健康保険の計算方法」で解説しますが、立川市は武蔵野市よりも所得割の率や均等割の額が高く、武蔵野市に比べて保険料額が高いことがわかります。このように居住地の自治体によって保険料が変わるので、どの自治体の国民健康保険に加入しているかによって、高い人もいれば安い人もいるというわけです。
前年サラリーマンだった場合は高くなる
前項に挙げた図にある国民健康保険の所得割とは、所得に応じて算定する保険料です。所得のうちの何割かを保険料とするわけですが、これは前年の所得金額を基に計算します。そのため、前年はサラリーマンで安定した給与収入があったのに、フリーランス1年目で前年より収入が落ちてしまったという場合、その年は収入が低いのに保険料が高くなります。
去年の年収が高かった場合は高くなる
フリーランスの方などで、去年の業績がよく一時的に年収が高くなった場合は所得割額が増えるので例年よりも保険料が高くなります。
フリーランスも健康保険を選ぶ事ができる
「そもそも国民健康保険や組合って何?」でも挙げた通り、フリーランスが加入できる保険には以下の2種類があります。
市町村の国民健康保険
1つめは、区市町村が運営する国民健康保険です。住所地のある区市町村の保険に加入できます。保険料は区市町村によって異なります。保険料が安い区市町村を任意に選んで加入することはできません。
国民健康保険組合
2つめは、主に地域ごとに業種などによって組織される国民健康保険組合が運営する国民健康保険です。例えば、医師が加入できる組合、建設業関連の人が加入できる組合、芸能人が加入できる組合などがあります。加入資格は組合によって異なるので、職業と住所地のある地域などから該当する組合があるか探す必要があります。
⇒全国国民健康保険組合協会「国民健康保険組合へのリンク[業種選択]」
どちらも家族も加入する事ができる
上記2つの保険どちらも家族も加入することができます。ただし、加入できる家族は以下の条件に該当する人です。
- 同一世帯であること
- 被用者保険が強制適用になる事業所に勤務していないこと
(ただし、パート労働者などで被用者保険に加入していない場合は除く)
なお、組合の保険の場合は同じ職種に従事していないことも条件に加わります。例えば、事業を手伝っている家族なら、組合員の家族としてではなく、組合員として加入することになります。また、国民健康保険は世帯単位での加入が条件となるため、同一世帯であれば被用者保険に加入していない家族は全員どちらか一方の同じ保険に加入しなければなりません。
年収が低いのに保険料が高い!何とかする3つの方法
次は、年収の割に保険料が高いと感じている方のために、何とかして安くする方法を3つ紹介します。
収入が安定するまでは配偶者の扶養になる
1つめは、配偶者の扶養になるという方法です。配偶者が被用者保険に加入している場合、フリーランスとして仕事をしていても、収入が少なければ配偶者の扶養に入れます。扶養に入れば自身の保険料は配偶者を含め被保険者全体が負担してくれるので、自身が保険料を支払う必要がありません。なお、配偶者の扶養となれるのは、年収が130万円未満の人です。
健康保険料が安い自治体へと移動する
2つめは、保険料が安い自治体に移動するという方法です。先に挙げた通り区市町村によって保険料が異なります。保険料が高めに設定されている自治体に住んでいる場合は、それより安く設定されている自治体に引っ越すことで保険料が抑えられます。各自治体の保険料がいくらなのかは、都道府県などの公式サイトで公表しているので、簡単に調べられます。
サラリーマンだった場合は社会保険の「任意継続」をする
3つめは、サラリーマンからフリーランスに切り替わる時に、健康保険の「任意継続」をする方法です。任意継続とは、サラリーマンの時に全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険に加入していた場合、退職後2年間は協会けんぽの健康保険に加入できるという制度です。任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に都道府県ごとに定められた料率を掛けて算出した金額で、基本的に2年間変わることはありません。
任意継続の標準報酬月額には上限があり、協会けんぽの場合30万円です。つまり、退職時の標準報酬月額が30万円より多かった人は、保険料が安くなります。ただし、一般の被保険者は事業主と折半して保険料を納めますが、任意継続の被保険者は全額本人負担となるため、保険料自体は安くなっていても支払う額は多くなります。また、国民健康保険と比較してどちらが安くなるかは、退職時の報酬額や住んでいる自治体、退職後の年収、扶養家族の有無などによって変わるので注意が必要です。
フリーランスはいくら払う?国民健康保険の計算方法
最後に、国民健康保険の金額の計算方法をまとめます。ここで解説するのは区市町村の国民健康保険の計算の仕方です。
国民健康保険料の内訳
国民健康保険料には、次の3つの区分があります。
- 医療分・・・医療給付に充てるもの
- 後期高齢者支援金分・・・後期高齢者の支援などに充てるもの
- 介護分・・・介護給付に充てるもの(40歳以上65歳未満のみ負担)
上記3つの区分それぞれに、以下の4つの項目があります。
- 所得割・・・世帯加入者の所得に応じて計算した保険料
- 資産割・・・世帯加入者の資産に応じて計算した保険料
- 均等割・・・世帯加入者の一人当たりの保険料
- 平等割・・・一世帯当たりの保険料
なお、1~4の項目の組み合わせや所得割の率、賦課限度額は自治体によって異なります。
基準額は所得金額から33万円を引いた金額
所得割を計算する際に必要となるのが基準額です。所得金額から33万円を引いた金額が基準額となります。加入者が2人以上いる世帯は、それぞれ別個に基準額を算出します。以下の例を基に実際に保険料を計算してみます。
【例:4人家族世帯】
- 世帯主40歳、所得350万円
- 配偶者35歳、所得80万円
- 子二人、未成年、所得0円
- 東京都武蔵野市在住
【出典】東京都福祉保健局「平成31年度国民健康保険税(料)率等の状況」
<基準額>
世帯主:350万円 - 33万円 = 317万円
配偶者:80万円 - 33万円 = 47万円
世帯加入者全員の基準額:317万円 + 47万円 = 364万円
医療区分の計算方法
<所得割>武蔵野市は4.90%
364万円 × 4.90% = 17万8,360円
<均等割>武蔵野市は2万4,200円
2万4,200円 × 4人 = 9万6,800円
医療分の保険料:17万8,360円 + 9万6,800円 = 27万5,100円(100円未満切捨て)
支援金分の計算方法
<所得割>武蔵野市は1.75%
364万円 × 1.75% = 6万3,700円
<均等割>武蔵野市は9,000円
9,000円 × 4人 = 36,000円
支援分の保険料:6万3,700円 + 3万6,000円 = 9万9,700円(100円未満切捨て)
介護分の計算方法
今回の例では、40歳の世帯主のみが介護分の対象となります。
<所得割>武蔵野市は1.45%
317万円 × 1.45% = 4万5,965円
<均等割>武蔵野市は1万1,700円
1万1,700円 × 1人 = 1万1,700円
介護分の保険料:4万5,965円 + 1万1,700円 = 5万7,600円(100円未満切捨て)
すべてを足した金額が国民健康保険の金額
上で算出した医療分、支援分、介護分の保険料を合算した金額が国民健康保険の年額です。
<国民健康保険料>
27万5,100円 + 9万9,700円 + 5万7,600円 = 43万2,400円
月額にすると、約3万6,000円になります。
【まとめ】健康保険を知って少しでも負担を軽くしよう!
今回はフリーランスの方が国民健康保険を安くする方法を3つ紹介しました。保険料が高いと感じている人は、健康保険のことを知って少しでも負担を軽くするために、今回紹介した中で無理なく実践できそうな方法があれば、ぜひ試してみてください。