確定申告をする個人事業主やフリーランスの方は、様々な経費をどう計上すればいいのか頭を悩ますことが多いことでしょう。
「自分の場合には電気代はどのように計上すればいいのだろうか」
「電気代の按分って何…?」
この記事では、個人事業主の電気代を経費に計上する際に、参考にして帳簿付け・確定申告作業を進められるようなサポート情報をご紹介します。具体的な算出方法までご紹介しますので、すぐに役立つことでしょう。
個人事業主の職場として使われているのはこの3箇所
個人事業主が電気代の経費計上を考えるときには、まず自分の職場がどのような職場なのかを把握しましょう。職場の種類・パターンによって、電気代の計算・算出方法が違ってきます。
最も多いのが自宅と職場が同じというもの
個人事業主に最も多いのが自宅と職場が同じという「自宅兼職場」のパターンです。この場合、使った電気代を100%すべて経費に計上するのはNGです。仕事のために使った電気代も発生していますが、それとは別に仕事とは関係なくプライベート・生活のために使った電気代も発生しているからです。
「自分の生活のために利用したお金は、経費としては認められない」
これが確定申告の経費計上の大原則です。自宅兼職場の場合、電気代や水道費・ガス代・通信費などを業務上使ったものだけに絞って計上しなければいけません。とはいえ、仕事に使った分だけを正確に計算するのは通常の自宅では不可能でしょう。
ですから、自宅兼職場で仕事をしている個人事業主は、電気代などを「家事按分(かじあんぶん)」という方法で算出する必要があります。家事按分の詳しい方法については、後程説明します。自宅兼職場の場合、電気代などをそのまま経費として計上するのは許されないのだ、と覚えておいてください。
自宅とは別に店舗や事務所を構えている
個人事業主で自宅とは別に店舗や事務所を構えている場合には、電気代などの経費算出は割と楽です。この場合、店舗や事務所では生活はしておらず、家事や生活に関する費用が電気代に混ざり込む心配はありません。
ですから、「家事按分」などといったことを考える必要はなく、職場で発生したすべての電気代などを経費として計上できます。
また、事務所やテナントの賃貸料金などももちろん事業のためのお金ですから経費に含められます。自宅に仕事を持ち帰ってやっている場合、自宅での作業時間に応じて「家事按分」の計算をしなければなりません。按分についての詳しい説明は後程書きます。
自宅と隣接した場所に店舗や事務所がある
個人事業主の職場の第3のパターンとして、自宅と隣接した場所に店舗や事務所がある場合があります。この場合、電気メーターなどは自宅と通常別になっており、請求も別途くるはずです。自宅と事務所の電気代をはっきり分けられるのであれば、按分などの計算は必要なく事務所のすべての電気代を経費に含められます。
隣り合っているので、事務所で残業はせずに深夜時間帯は自宅で仕事をしているというパターンもあるかもしれません。この場合、自宅の分の電気代の一部もさらに経費に計上できます。自宅の電気代すべてを経費にはできませんから、自宅での作業時間などに応じて「家事按分」の計算をしなければなりません。
家事按分については次の項目で説明します。
自宅で仕事をしている個人事業主の水道光熱費の按分とは?
自宅で仕事をしている個人事業主は、電気代をはじめとする水道光熱費などを「家事按分」しなければなりません。
「按分」といった普段聞きなれない言葉が出てくるので、難しそうだと確定申告作業で挫折してしまいそうになる方も多いことでしょう。以下、経費の按分計算について詳しく分かりやすく説明をします。
按分とは基準となる数に比例した割合で割り振った比例配分の事
按分(あんぶん)とは、一定の割合で物事を割り振ることです。より厳密にいうと「基準となる数に比例した割合で割り振った比例配分」のこと。このように説明されてもピンとこない方が大多数でしょう。
居酒屋やレストランで複数人で食事をしてお金を分担する場合を例に考えてみましょう。
2人で10,000円の食事代がかかった場合、単純に10,000円を頭数の2で割るのがいわゆる「割り勘」です。2人で10,000円の食事代がかかったけど、1人は遅れてやってきてほとんど食べていない場合はどうでしょうか。
単純に割るのではなく、食べた量や時間などに応じてそれぞれの支払額を計算する…これが「比例配分=按分」です。単純計算ではなく「使った分だけ」などの基準で割合を求めて額を決めていくわけです。
自宅を仕事で使っている場合は水道光熱費などの比例配分
個人事業主が自宅で仕事をしている場合、経費に計上できる電気代その他の水道光熱費などは単純な計算では算出できません。「電気代をプライベートにも仕事にも使っているから2で割ればいいだろう」というわけにはいかないのです。そこで出てくるのが「家事按分」です。
仕事で使った分と家事(日常生活)で使った分の割合を決めて、割合に応じて比例配分して計算していきます。
1日のうち電気を使っている時間はどれだけあるのか。
自宅で仕事をしている時間はそのうちどれくらいの割合なのか。
この割合に応じて電気代を割って、仕事に使ったといえる分だけを経費として計算していくわけです。もう少し具体的な割合計算の方法については、次の項目で改めて説明します。
自宅の家賃の按分も経費として認められる事がある
按分計算で経費に計上できるのは光熱費などだけではありません。自宅の家賃も場合によっては経費として認められます。自宅を事務所として使っている場合は、きちんと按分計算をしていれば経費にできます。
この場合は、作業場として使っているスペースや作業時間などをベースに割合を決めて按分計算していきます。自宅ではない場所を事務所としている場合にも、厳密に自宅での仕事時間などを按分すれば経費になりえますが…税務署からつっこまれたときにきちんと説得力をもって説明できるかが肝となってくるでしょう
電気代他の按分の割合計算のやり方について
個人事業主が自宅の電気代などを経費にする際には、仕事につかった分量・割合に応じて按分計算をしていきます。すべての額のうち、業務に使ったといえる時間はどれだけの割合になるのか、それを求めて割合計算をするという流れです。以下で、より詳しく説明します。
電気を使う時間は1日の半分の12時間
「仕事で電気を使っている時間が5時間、1日は24時間だから…」と計算するのは間違いです。
電気を使っている時間は24時間すべてではないはずです。寝ている間なども冷蔵庫は動いていますが、起きている時間ほどではありません。そこで、実際に自宅で起きて電気を使っている時間をだいたい見積もります。仮に1日の半分の12時間だけ電気を使っているとすると、この12が割合の「分母」となります。
その内仕事をしている時間が5時間の場合の計算
次に、電気を使っている12時間のうち、自宅で仕事をしている時間が5時間の場合、この5が割合の「分子」となります。「12分の5」という割合が、全電気代中で仕事の分の占める割合となります。
とある月の電気代が12,000円だった場合、仕事に使ったといえるのは「12,000×12分の5」で5,000円。12,000円すべてを経費に計上するのではなく、5,000円だけを経費に計上します。
この按分の割合については、電気代の請求書などにメモ書きして記録に残しておくようにしましょう。後から税務署に質問された場合などに答えやすくなります。
水道代やガスの場合は管轄の税務署に相談する
按分計算するのは電気代だけではありません。水道代やガス代なども基本は按分計算です。仕事に使った分量や時間などがはっきり分かるのであれば、割合計算をして計上しましょう。
しかし、水道代やガス代は電気代と比べると、仕事に使ったといえる割合を単純に割り出しづらい部分があります。念の為、管轄の税務署に相談しておくといいでしょう。
携帯代や電話代通信費の場合は使う時間で計算する
水道光熱費の他、携帯電話代金やインターネット料金その他の電話代通信費も、仕事で使った分に応じて按分計算して経費に計上できます。この場合も、仕事に使う時間はどれくらいなのかを元に割合を決めて計算しましょう。
確定申告の時に怪しまれないように注意すべき点
個人事業主の確定申告では、税務署から怪しまれないような帳簿づくり・経費計上を心がける必要があります。税務調査で怪しまれ質問されてうまく答えられなかったら、過少申告税などの罰を受けることになりかねません。
以下では、確定申告で怪しまれないように注意すべき点を紹介します。
わからない事があったら税務署に相談してみる
経費や按分計算について、何か分からないことがあったら税務署に相談してみるのが一番です。確定申告の時期は税務署は込み合いますが、期間外ですとあまり待たずに税金相談ができるのでオススメです。相談するだけでしたら管轄している税務署でなくても受け付けてくれます。
すべての水道光熱費を経費に入れない事
税務調査でNGとされないためにも、すべての水道光熱費などを経費に計上しないようにしましょう。
「自宅兼事務所だけど1日中仕事だけをしているから電気代を100%経費にする!」
などという主張は税務署にはなかなか通りません。経費を少しでも増やしたい気持ちはもちろん誰もが持っていますが、脱税とみなされないためにもきちんと按分計算をしましょう。
【まとめ】個人事業主の電気代は経費として計上すべき!
以上、個人事業主の電気代その他の費用を経費に計上する方法についてご紹介をしてきました。
「自宅兼事務所だし経費になるか分からないから、電気代は経費に計上しないでおこう」
などという考えは非常にもったいないです。仕事に使った分はしっかりと按分計算をして、経費として計上するようにしましょう。