個人事業主の方は毎日の帳簿づけが欠かせませんよね。確定申告の時期を迎え、収支内訳書や決算報告書などを作成するに当たり、帳簿の内容について見直している方もいると思います。
今回は個人事業主の方がアルバイトをして得た収入やアルバイトに払った代金はどう仕訳をするのかについて注意点を含めて解説します。個人事業主としてスタートしたばかりの方や初めてアルバイトを雇用したという方は、ぜひ参考にしてください。
個人事業主がアルバイトをしなくてはならない理由トップ3
アルバイトの仕訳について見る前に、なぜ個人事業主がアルバイトをしなくてはならないのかまとめます。個人事業主がアルバイトをする理由として多いのは次の3つです。
事業を始めたばかりでまだ軌道に乗っていないから
1つめの理由は、事業を始めたばかりでまだ軌道に乗っていないからです。個人事業主になったばかりの頃は、取引先や顧客が少なくまとまった収入が得られないこともあります。そういった状況で生活していくためには、やむなく副業としてアルバイトをしてお金を稼ぐ必要が出てきます。
景気に左右されて仕事の量が安定しないから
2つめの理由は、景気に左右されて仕事の量が安定しないからです。景気がいい時は売上が多くそれなりの収益が得られますが、景気が悪くなるとなかなか売上が伸びずもっと収入がないと困るという状況も考えられます。景気による影響を受けやすい業界の個人事業主は、不景気の業績不振に備えてアルバイトをしているケースもあります。
生活費を捻出するだけの余裕が無いから
3つめの理由は、生活費を捻出するだけの余裕がないからです。事業による収入は常時安定していても得られる金額が少なければ生活できません。そもそもあまり収益の得られない事業を営んでいる個人事業主は1つの事業をメインとして、アルバイトを含めいくつか仕事を兼業しているケースもあります。
アルバイト収入があった場合の給与の3つの仕訳方
次はいよいよアルバイト収入の仕訳についてまとめます。アルバイトによる収入は、用途によって以下の3つのうちのどれかに仕訳できます。
事業用の資金にした場合は「事業主借」
1つめは、アルバイト先から受け取った給与を事業用の資金にした場合です。この時は「事業主借」という勘定科目で仕訳します。事業用と私用の預金口座をしっかり分けて管理している場合、アルバイト代を私用の口座ではなく事業用の口座に入金した時も「事業主借」で仕訳します。
例として、アルバイトの給与5万円が5月25日に事業用の預金口座に振り込まれた場合は、以下のように仕訳します。
「事業主借」科目は、個人のお金を事業用の口座に入金したり個人のお金で事業に使うものを購入したりした場合に使用します。
プライベートな口座へ入金した場合は仕訳する必要は無し
2つめは、そもそも仕訳しないという方法です。アルバイト収入は事業による収入ではないので、事業による収支を記入する帳簿には記録する必要がありません。ただし、個人事業主が所得税の確定申告をする際には事業所得だけでなくアルバイトで得た収入も申告しなければなりません。これについては3つめの方法で解説します。
バイト先からの給料は「給与所得」とする
3つめは、アルバイト先からの給料を事業用の資金にはしなかった場合です。例えば、私用の預金口座に入金した時は「給与所得」とします。
上記3つの仕訳を確定申告ではどのように取り扱うかについてまとめておきます。まず、アルバイト収入は事業によるものではないので、所得のうちの「給与所得」となり、特に仕訳の必要はありません。確定申告では申告書Bの給与収入欄と給与所得欄に記載します。
アルバイト収入を事業の資金とした場合には「事業主借」として仕訳し、期末に「事業主貸」科目と相殺した上で来期の「元入金」として集約します。青色申告をする際は、貸借対照表に「事業主借」「事業主貸」「元入金」の記載欄があります。
アルバイトを使った・外注に仕事を依頼した場合の仕訳
次は、アルバイトを雇用したり外注に仕事を依頼したりして支払った代金の仕訳方法をまとめます。
アルバイトに支払った金額は「給与」または「給与賃金」とする
まず、アルバイトを雇用して賃金を支払った場合です。アルバイトに支払った金額は「給与」または「給与賃金」という勘定科目で仕訳します。確定申告では、収支内訳書や青色決算書には経費の欄に「給料賃金」という項目があるので、そこに記入します。さらに、「給料賃金の内訳」欄には支払った相手ごとに支給額の内訳を記載します。
外注に依頼した場合には「外注工賃」とする
次は、外注に依頼した場合です。外注して支払った金額は「外注工賃」という勘定科目で仕訳します。確定申告では、収支内訳書や青色決算書には経費の欄に「外注工賃」という項目があるので、そこに記入します。
個人事業主がアルバイトや外注に仕事を依頼する時の注意点
次は、個人事業主がアルバイトや外注に仕事を依頼する時の注意点についてまとめます。
家族などの専従者に対する給与は経費にならない
家族に事業を手伝ってもらっている時に家族に支払ったアルバイト代や給料の仕訳については注意が必要です。そもそも事業主と生計を一にしている家族や親族に対して支払った金額は経費になりません。
ただし、一定の要件を満たせば家族に対して支払った給与を経費にできる場合があります。それについては次で解説します。
事業専従者への給与は青色申告で届け出する事
確定申告を青色申告で行えば青色事業専従者給与の特例により、家族に対して支払った給与を経費にすることができます。青色事業専従者とは、次の要件すべてに当てはまる人のことです。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者またはその他の親族であること
- 年齢が15歳以上(その年の12月31日現在)であること
- 6か月を超える期間(または事業に従事できる期間のうち2分の1を超える期間)、青色申告者の営む事業に専ら従事していること
青色申告専従者給与の特例を受けるには、「青色申告承認申請書」を税務署に提出して青色申告で申告するのはもちろん、「青色事業専従者給与に関する届出書」も税務署に提出しておく必要があります。
なお、白色申告には専従者給与の特例がないので家族に対する給与を経費にはできませんが、かわりに白色事業専従者控除を受けることができます。詳しい控除額については、以下のページを参照ください。
⇒国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
帳簿づけに便利なアプリやソフトを使おう
最後に、毎日の帳簿づけに便利な方法として、アプリやソフトを使う方法を挙げます。アプリやソフトのオススメポイントは以下の2つです。
会計ソフトを使う事で仕訳が簡単になる
1つめのオススメポイントは、手書きでの帳簿づけに比べ、会計ソフトを使うと仕訳が簡単になることです。例えば、銀行口座やクレジットカードの取引データを取り込んで自動で仕訳してくれるソフトもあります。手書きや手入力の手間が省けミスも減らせます。
また、アルバイト収入の仕訳方法で見たように、個人事業主の帳簿づけには個人のお金を事業用とした場合に使う「事業主借」や個人の支出を事業用の資金で支払った場合に使う「事業主貸」という勘定科目が使われます。この科目が多いと、期末の相殺処理が非常に面倒です。会計ソフトの中にはこの相殺処理も自動で行ってくれるものもあります。
アプリ連動型の会計ソフトだとどこでも記帳ができて忘れが無い
2つめのオススメポイントは、アプリ連動型の会計ソフトだとどこでも記帳ができて記入忘れがないことです。オンラインの会計ソフトはスマホアプリでも利用できるものがあります。パソコンがなくても外出先で空いている時間に記入できるので、事務所に戻ってから帳簿づけをしなくて済務ほか、入出金時などにすぐに記入すれば記帳忘れがありません。
【まとめ】個人事業主のアルバイトの仕訳はソフトで簡単!
今回は個人事業主がアルバイト収入を得た時やアルバイトを雇用して支払った時の仕訳についてまとめました。アルバイトに限らず、帳簿づけの際には仕訳に悩むこともありますよね。正確な帳簿づけを負担なく行うためにも会計ソフトを利用することをオススメします。
今回紹介したように、会計ソフトを使うと自動仕訳で手間が省けるほか、隙間時間にさっと帳簿づけしてしまうこともでき記入忘れがありません。日々の帳簿づけをもっと手軽にできないかとお悩みの個人事業主の方は、ぜひ会計ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。