予定納税という制度はご存知でしょうか。予定納税とは、言わば所得税を前払いで分納できる制度とも捉えることができますが、誰でも利用できるものではありません。一定の納税額以上の人に生じる義務です。
この記事では、予定納税の3つのポイントを紹介します。さらに期限までに納税できなかった時や予定納税額を減額したい時はどうすればいいのかについてまとめます。個人事業主の方はぜひ参考にしてください。
そもそも予定納税とは?押さえておくべき3つのポイント
まずは、そもそも予定納税とはどんなものなのかまとめます。次の3つのポイントを押さえておきましょう。
1.前年の所得税が15万以上の方の納税義務
予定納税とは、前年の所得税額などから計算する予定納税基準額が15万円以上の方に生じる納税義務です。予定納税基準額の計算方法にはいくつか条件はありますが、通常は前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額になります。つまり、前年の所得税額が15万円以上あったら予定納税をする必要があるというわけです。
ただし、以下に当てはまる方は異なります。
- 山林所得、退職所得等の分離課税の所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得がある方
- 前年分の所得税について災害減免法の規定の適用を受けた方
上記に該当する方に関する予定納税基準額の詳しい計算方法については以下のページを参照ください。
今回の確定申告で15万円以上の所得税を納める個人事業主の方は次回予定納税の対象になるので納税時期などについて念頭に置いておくと安心です。
2.納税金額が増えるわけではない
予定納税の対象になったからと言って納税金額が増えるわけではありません。前年の所得金額や税額を基にその年の所得税額が概算され、そのうちの3分の2の額を2回に分けて納税するのが予定納税です。実際の所得税額は翌年3月の確定申告の際に計算し、予定納税した税額を差し引いた残額を納付することになります。
3.6月15日までに税務署から通知書が届く
予定納税の対象者には、6月15日までに税務署から予定納税の通知書が届きます。この通知書に予定納税をする金額が記載されています。納付期限については次項を参照ください。
個人事業主の予定納税の支払時期について
次は予定納税の支払い時期についてまとめます。予定納税の対象となる個人事業主の方は納税準備に役立ててください。
納税時期は7月と11月
予定納税の納付期限は7月と11月の2回です。
- 予定納税第1期・・・7月1日~7月31日
- 予定納税第2期・・・11月1日~11月30日
予定納税のおおよその納税額はいくら?
次は予定納税のおおよその納税額はいくらなのか見てみましょう。
7月に前年の所得税の3分の1
第1期の7月には、前年の所得税額を目安として、おおよそその3分の1の金額を納付します。
11月に前年の所得税の3分の1
第1期と同様に、第2期の11月にも前年の所得税額を目安として、おおよそその3分の1の金額を納付します。前年の所得税額は個人によって違うので、それぞれの納税額を基に計算してみてください。
予定納税が払えない!拒否する事はできるの?
次は、予定納税額が想定より高かったりどうしても期日までに用意できなかったりして払えない時は拒否することはできるのかまとめます。
納税が遅れたら延滞税が加算される
納付期限までに払えず期日を過ぎてしまった場合は利息にあたる延滞税が課されます。延滞税は納付期限の翌日から納付するまでの日数に応じて加算されます。遅れれば遅れるほど延滞税も増えていくので払うのが難しい時はそのままにせずにきちんと対処する必要があります。
延滞税は納付期限の翌日から2か月間とそれ以降では割合が異なります。延滞税の割合について次で詳しく見てみましょう。
納付期限の翌日から2か月間の延滞税割合
納付期限の翌日から2か月間の延滞税は原則として年7.3%ですが、以下のどちらか低い方とされています。
- 年7.3%(原則)
- 特例基準割合+1%
(年2.6%・・・2018年1月1日から2019年12月31日まで)
つまり、2018年と2019年は原則(7.3%)より「特例基準割合+1%」が低いので、納付期限の翌日から2か月間の割合は年2.6%となります。
納付期限の翌日から2か月を過ぎたあとの延滞税割合
納付期限の翌日より2か月を過ぎたあとの延滞税は原則として年14.6%ですが、以下のどちらか低い方とされています。
- 14.6%(原則)
- 特例基準割合+7.3%
(年8.9%・・・2018年1月1日から2019年12月31日まで)
つまり、2018年と2019年は原則(14.6%)より「特例基準割合+1%」が低いので、納付期限の翌日から2か月を過ぎたあとの割合は年8.9%となります。
所得に対する税金なので拒否はできない
予定納税とはあくまでも所得税の一部なので納税を拒否することはできません。例えば、予定納税がなかったとしたら、3月の確定申告の時に全額を支払うことになります。高い納税額を一度に支払うのではなく3回に分割して納付できると思えば1回に払う金額が少なくて済むので予定納税制度があった方が懐には優しいと言えます。
個人事業主が予定納税を減額申請する時のやり方
ただ、個人事業主の方で経営不振になってしまったり途中で事業を止めたりした場合、前年よりも収入が激減し予定納税額を納めることができないというケースもあるでしょう。そんな時の対処法として減額申請の方法を紹介します。
払い過ぎたら次の年の確定申告から減額される
これまでにも触れましたが、予定納税で支払った金額は翌年の確定申告の際に計算した所得税から差し引かれます。もしも確定した所得税額が予定納税した額より少なかった場合、多く支払った分は利息にあたる還付加算金が上乗せされて戻ってきます。
予定納税を払い過ぎたとしても、翌年の確定申告で過不足を精算するので最終的に納税額が増額されてしまうことは決してありません。それどころか多く払っていれば利息が付いて戻ってくるので得をすることになります。なお、還付加算金の割合は延滞税と同じです。
税務署へ予定納税額の減額申請書を提出する
予定納税額は、税務署に減額申請書を提出して承認されれば減額してもらうことができます。ただし、誰でも減額してもらえるわけではありません。減額の手続きができるのは、6月30日時点の状況で見積もった申告納税額が予定納税基準額より少ない場合です。なお、2期分についてのみ減額申請することもできます。この場合は10月31日時点の状況で見積もります。
予定納税の対象となる方の具体例としては、以下のような理由により前年よりも納税額が少なくなることが予想される方です。
- 廃業や休業、失業をした場合
- 業績不振などのため、前年よりも明らかに所得が少なくなると見込まれる場合
- 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受けた場合
- 医療費控除や配偶者控除などが適用される事例が増え前年よりも控除額が増える場合
申請書の提出期限は以下の通りです。
- 1期分と2期分を合わせて提出する場合・・・7月1日~7月15日
- 2期分のみ提出する場合・・・11月1日~11月15日
申請書には見積もった申告納税額を計算した際に基礎とした内容を記載した書類を提出する必要があります。例えば、経営不振や廃業に伴って収入が減少する場合、1月1日から6月30日(2期分については10月31日)までの損益計算書の試算表などです。
なお、提出方法と提出先は以下の通りです。
- 提出方法・・・持参または送付
- 提出先・・・所轄の税務署長
予定納税額の減額申請書は国税庁の公式サイトからダウンロードできます。
⇒国税庁「[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」
【まとめ】個人事業主も予定納税は避けられない!
今回は予定納税とはどんな制度なのか、納期に間に合わなかった場合の延滞税と減額申請手続きについてまとめました。前年の所得税の納税額が15万円以上あれば個人事業主でも予定納税は避けられません。
対象になっていることを知らないでいると急に予定納税の通知書が来てびっくりしてしまいます。予定納税の対象になる個人事業主の方は、今回の確定申告で納税した額から予定納税額を概算し納税に備えておくと安心です。また、収入が減少することが見込まれる方は、予定納税額の減額申請についてもぜひ参考にしてください。