個人事業主の年収が1000万円を超えた場合、喜んでばかりはいられません。税金のことを考えると、不安も多いですよね。それでは年収1000万円を超えた時の個人事業主の支払うべき税金と、消費税の関係についてご紹介していきます。
年収1000万円の個人事業主の税金
それでは、年収1000万円の個人事業主の税金について、ひとつずつ説明していきましょう。名前は聞いたことがある税金も、どんな内容なのかをしっかり把握しておきましょう。
所得税
所得税は、個人の一年間の所得に対して課税されるものです。所得とは儲けのことで、収入に対してかかる税金ではありません。所得すべてにかかるものではなく、所得からさまざまな所得控除を引き、残った所得額に対してかかります。
収める先は国になります。平成25年からは、東日本大震災に関する復興特別所得税も入ります。
サラリーマンを例にとると、給与・賞与といった、会社から支払われる報酬の年間合計が収入になります。年収とも呼ばれます。所得は、年収から給与所得控除を引いた金額になり、給与所得と呼ばれます。源泉徴収票でチェックできます。
個人事業主の場合、年商や売り上げ、社会保険料収入・自由診療収入などの金額が収入になります。ここから必要経費となる家賃や仕入れ代、減価償却や働いている人々の給与などを差し引いた額が、所得となります。この金額にかかる税金が所得税です。
住民税
住民税は、市町村に納める税金です。道府県民税と市町村民税を合わせて住民税と呼びます。国に納める所得税とは、収める相手も異なります。
住民税は賦課課税方式といって、市町村から税額が通知されるシステムになっています。また所得税はその年の所得に対してかかりますが、住民税は前の年の所得をもとに計算されます。
健康保険料
健康保険料は、被保険者の収入に応じて保険料が定められます。健康保険組合に加入していると、保険適用治療にかかる医療費が本来負担すべき額の3~1割程度で済むようになっていますが、このシステムを支えているのが、健康保険料です。
実は国が運営しているわけではなく、各地方自治体が運営しているので、保険料の税率は済んでいる地域によって異なります。また39歳までは医療分と後期高齢者支援分を納めますが、40歳以上になると介護保険料がプラスされるため、負担が大きくなります。個人事業主の場合は、前年所得をもとに計算されます。
予定納税
予定納税とは、前年の申告納税額が15万円を超えた際、7月・11月の2回に分けて、前年度の申告納税額の3分の1ずつを前払いするというシステムです。前払いするだけなので、余計に多く支払わなければならないものではありません。
年収が1000万をこえると、税率は33%以上になります。所得税が15万円以上になるかどうかの個人事業主のボーダーラインは、課税所得金額が195万円~330万円になります。
国民年金
ここ数年、ニュースになることも多い国民年金ですが、どんなものなのでしょうか。日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人がすべて加入することになっており、個人事業主の場合は国民年金第一号被保険者と呼ばれています。直接自分で納める年金になります。サラリーマンなどは厚生年金や共済などに加入しており、ちょっと仕組みが異なります。
個人事業税
個人事業税とは、個人事業主に課される税金です。これに対するものに、法人事業税という、法人が支払うべき税金があります。納付先は都道府県になります。
個人事業税の納付時期は8月と11月になります。確定申告で算出され、8月に2期分の納税通知書が送られてきます。しかし個人事業税は租税公課の勘定科目に仕訳され、事業に関わる税金のため経費にすることが可能です。また一年間営業することで290万円の控除が受けられます。
消費税
個人事業主の場合、開業から2年間は免税事業者として消費税納税が免除されています。また2年以上経過している場合でも、前々年の課税売上高が1000万円を超えていない場合は、消費税は免税されます。その点について、事項から詳しく見ていきます。
年収1000万円の個人事業主と消費税の関係について
年収が1000万円を超える個人事業主と、それ以下の年収でおさまる個人事業主とでは、消費税の扱い方が全く違ってきます。個人事業主にとって、年収が1000を超えるか否かが、大きなポイントになるのです。
前々年の年収が1000万円以上の場合は消費税を納める
消費税は、前々年、2年前の課税売上高でどうなるのかが決まります。前々年の年収が1000万円を超えれば、消費税を納めなければなりません。売り上げ分の消費税をすべて支払うのではなく、仕入れや経費などで支出した消費税は差し引き、残った金額を支払うことになっています。
しかし2年も前の売り上げで計算されるということは、現状の売り上げとは差が開いている場合もあります。2年前の売り上げが非常に良かった場合も、それ以降の売り上げがふるわなかった場合は、また免税事業者に戻ることができます。
前年の1月1日~6月30日に1000万円の場合は消費税を納める
消費税を納めるかどうかは、2年前の売り上げだけで決まるわけではありません。前年の1月1日から6月30日を特定期間とし、この期間だけで課税売上高が1000万円を超えて、さらに給与支払い額が1000万円を超えた場合、翌年は課税事業者として消費税を納めなくてはなりません。
開業から2年目までは消費税は納めなくても良い!
消費税は、開業から2年間は免税事業者になるので、消費税の納税義務がありません。売り上げと一緒に預かっている消費税は、税務署に納付しなくて済むのです。
消費税が高くて一度に納税できない場合
特定期間に集中して課税売上高が非常に高くなってしまい、それに伴って給与等支払額も1000万円を大きく上回ってしまった場合、翌年の消費税がぐんと高くなってしまう可能性があります。今は売り上げがそう高くなく、消費税が一度に払えない場合、どうすれば良いのでしょうか。
滞納したら延滞税が高いので延滞しない事
3月31日までに支払うべき消費税を滞納すると、延滞税が発生してしまいます。消費税は2019年秋から10%になりますが、延滞税は14パーセントほどの利率になります。より払うことが難しくなるうえ、延滞が続いていると差し押さえになってしまいます。預金や不動産の差し押さえ執行が実施されると、事業の継続ができなくなる恐れもあります。
税務署に相談をする事
どうしても払えない、という場合は税務署に相談しましょう。一定の条件を満たしていれば、換価の猶予・納税の猶予が認められる可能性もあります。
換価とは財産の売却で、不動産や預金の差し押さえなどが猶予されます。また猶予期間として認められた期間の延滞税も、一部~免除されます。最長で1年となりますが、事業の継続はもちろん生活維持が困難になるほど余裕がないことが認められれば、2年間延長されるケースもあります。
消費税納税の起原から6か月以内に申請書が提出されていることが条件になるので、払えないと分かった時点で少しでも早く税務署に相談しましょう。
年収が1000万円以下になってしまったらどうすべき?
年収が1000万円以下になってしまったら、どうすれば良いのでしょうか。1000万超えだったころの消費税を支払わずに済むように、速やかに手続きを行いましょう。
条件を満たしたら「消費税課税事業者届出書」を提出する
特定期間内の収入と給与支払いが1000万円を切り、一年間の課税売上高も1000万円を超えなかった場合は、免税事業者に戻ることができます。その際は、条件を満たした時点で消費税課税事業者届出書を提出する必要があります。
税込経理方式を行う事
消費税を納付する事業者になった時点で、税込経理方式で処理をするようにしましょう。税込経理方式とは、仕入れで支出された代金、商品を売った時に預かった代金を、消費税込みでまとめて処理する方法です。
決算する場合に、売り上げ分の消費税を租税公課、支払い分の消費税を未払い消費税として処理します。税抜きで計算する税抜経理方式よりもシンプルで、記載もわかりやすく、なります。
前々年の年収が5000万円以下なら「簡易課税制度」を選択する
前々年の年収が5000万円以下の場合、中小事業者の事務負担を軽減するための簡易化された仕入れ控除税額計算方法が利用できる、「簡易課税制度」を選択すると良いでしょう。
年収1000万円の個人事業主がすべき節税について
年収1000万円というと、サラリーマンで考えればかなり裕福な生活が送れるように感じます。しかし個人事業主の場合、そうはいきません。それはサラリーマンが手取りでもらう給与はすでに税金が引かれているのに対し、個人事業主は収入からさらに税金を計算して支払わなければならないからです。
個人事業主と会社員とを年収1000万円で比較計算した場合、生涯手取り額の差はなんと7900万円と言われています。これほどまでに税金による差がついてしまうのが、個人事業主のつらいところですね。
しかし、節税対策をすることで、会社員と変わらない収入が入ってくるようになったり、それよりもたくさんの収入を手にすることができる可能性もあります。
基本は経費節減と、所得控除の活用になります。また退職金もないため、付加年金や個人年金なども節税対策としておすすめです。付加年金は利率が非常に高い公的年金で、所得税や住民税も安くなります。
【まとめ】個人事業主が年収1000万円になったら節税が大事!
個人事業主が年収1000万円になると、消費税を納めなければならなくなります。その際、節税対策をしっかりしておくと、将来年収が下がった時や、仕事を辞めて年金で暮らしていく時も困らずに済みます。生涯にかかる資金を見越して、節税対策を行っておきましょう。