初めての確定申告は不安なものです。初めてだから今年はとりあえず白色申告で済まそう、とお考えの個人事業主やフリーランサーの方も多いでしょう。ですが、白色申告そのものや、帳簿のつけ方、種類など、基本的な知識があやふやになっていませんか?
特に初めて確定申告をされる方はしっかりと知識を身につけて不安を解消したいところですね。本記事では、白色申告に必要な帳簿や書類をはじめ、初歩的なことから基本的な事柄まで一通りご紹介いたします。あちこちのウェブサイトを回る手間を省くためにご活用ください。
白色申告で必要な帳簿と計算書は全部で3つ
白色申告の帳簿づけは「法定帳簿」「任意帳簿」のふたつがあり、確定申告の際には「確定申告書B」とともに「収支内訳書」を税務署に提出します。「収支内訳書」は読んで字のごとく、その年の収支をまとめたものですので、すべての帳簿は収支内訳書を作成するためにつけるといて差し支えありません。領収書などの書類は帳簿の正しさを証明するために保存します。
収入と経費がきちんと記載されていれば書式は自由です。手書きでもエクセルでも問題はありません。ですが、特に手書きだと記載漏れなどミスが生じる場合があります。現在(2019年記事執筆時点)ではクラウド会計を使うのがもっとも手間が省けます。
なお、白色申告に限らず、確定申告後、帳簿や書類はかならず紙で保存しなければいけません。クラウド会計などを使う場合はデータのまま保存せず、かならず印刷する必要があります。くれぐれもお気をつけください。
法定帳簿
業種・業態にかかわらずすべての個人事業主やフリーランサーがつける必要のある帳簿です。収入額を記載した帳簿(売上帳)と、必要経費を記載した帳簿(経費帳)が該当します。
任意帳簿
法定帳簿とは別に、各個人事業主やフリーランサーの業態に応じて作成する帳簿です。売掛帳や買掛帳、棚卸表などが該当します。事業内容によっては固定資産台帳も必要です。
収支内訳書(損益計算書)
その年の1月から12月のすべての収支を記載して、税務署に提出する計算書です。国税庁のウェブサイトにテンプレートが載っていますので、フォーマットに合わせて帳簿をつけていくと効率よく収支内訳書を作成できます。あらかじめ目を通しておくと確定申告間際になって戸惑わずに済みますよ。
白色申告の帳簿の簡易記載について
白色申告のためにつける帳簿は家計簿のような感覚で記帳できます。日付・摘要(○○代といった書き方)金額を一日ごとに書けばOKです。これを「単式簿記」といいます。青色申告の帳簿のような「複式簿記」よりずっと簡単ですが、手書きやエクセルでつける場合は簿記に関する最低限の知識が求められます。
やはりクラウド会計を使うのが無難でしょう。
1日の売上や出費をまとめて記載できる
白色申告のための帳簿をつける際、一日の合計額をまとめて記載することができます。例として一日の取引(この場合は掛売帳)を想定してみます。
- 1月23日 掛売上 A雑貨店 1000円
- 1月23日 掛売上 B工務店 2000円
1月23日分をまとめて記載するためには「A雑貨店」「B工務店」への納品書に番号を振ります。仮に「A雑貨店」への納品書ナンバーを009「B工務店」への納品書ナンバーを010とします。二つの取引をまとめて書くには、
1月23日 掛売上 3000円 納品書 #009,010
のようにします。
なお、一度に数十万円など、普段とくらべて明らかに高額な取引や経費が発生した場合、同じ日付でも別の行に書きましょう。税務署から不要な誤解をされずに済みます。
伝票は名前やナンバーを記入する
前述の通り、納品書などの伝票には取引先の名前やナンバーを振って管理する必要があります。伝票の種類ごとに「ボールペン」かつ「ナンバーはアラビア数字で」書くのが原則です。ナンバーの振り方は、業種や業態、事業の規模にもよりますが、3桁の連番(No.003、No.254といった具合)が無難です。
白色申告に必要な法定帳簿について
法定帳簿は業種・業態にかかわらずつけなければいけないと法で定められています。任意帳簿や伝票などの書類と違い、保存期間が7年と特別長く設けられているのでご注意ください。
収入金額を記載してある帳簿
一般に「売上帳」と呼ばれるものです。その日の売上(収入)を記載します。番号を振った伝票があれば一日ごとの売上をまとめて書いても構いません。
必要経費を記載してある帳簿
一般に「経費帳」と呼ばれているものです。必要経費を1日ごとにつけていきます。少額であれば1日ごとの経費をまとめて書いて構いません。突出して高額な経費が発生した場合は別の行に同じ日付で書きましょう。
保存期間は7年間
法定帳簿の保存期間は7年間と定められています。法定帳簿以外の帳簿や書類はすべて保存期間が5年ですので「法定帳簿は7年」と覚えておけば間違いありません。他の帳簿や書類とともに、万が一、税務調査が入ることがあれば必ず呈示しなければいけませんので、厳重に保管してください。
白色申告に必要な任意帳簿について
法定帳簿とは別に、業種・業態に応じて作成する帳簿です。任意といっても”適当”という意味では決してありません。収支内訳書の作成に必要な帳簿を業務・業態に合わせて用意する必要があります。
法定帳簿に記載されない業務に関する帳簿
任意帳簿では「現金出納帳」「預金出納帳」などのほか、売掛金や買掛金を管理する必要がある業種では「売掛帳」「買掛帳」を用意します。その他「棚卸表」「固定資産台帳」など業種・業態によって必要な帳簿を任意でつけます。
保存期間は5年間
上記のとおり、法定帳簿以外の帳簿・伝票の保存期間は5年です。任意帳簿も5年間の保存が義務づけられています。厳重に保存してください。
その他の書類の保存期間について
請求書、領収書、納品書、棚卸表などの保存期間は、白色申告の場合は5年間です。フォルダーやファイルブックなどを有効活用して効率よく、かつ厳重に保存しましょう。しっかりしたフォルダーなどに西暦を明記し、前年の各書類をインデックスしておけば整理しやすくなります。
請求書の保存期間は5年
保存の際は月別にまとめてファイリングするのが無難で手間がかかりません。どうしても顧客別に整理したい場合は顧客別でファイリングしても構いません。
領収書の保存期間は5年
領収書は細かく分類して保存すると管理が面倒ですので、こちらも月別の保存で大丈夫です。A4の紙などに貼ってファイリングするのが一般的です。
納品書の保存期間は5年
請求書の保存方法と同じで構いません。納品書や領収書にしてもそうですが、デスクの片隅に山積みせず、こまめにファイリングするようにしましょう。
棚卸表の保存期間は5年
棚卸は業種によってない場合もありますし、あっても頻度が違いますので、一番やりやすい方法で保存して構いません。企業から独立した個人事業主やフリーランサーなら元勤務先のやり方を参考にできますね。最低限、棚卸表の年月日はわかるようにしておきましょう。
【まとめ】白色申告の帳簿の事を理解しておく事が大事!
本記事では白申告の帳簿づけをはじめ、初歩的なことから基礎知識まで網羅しました。これまで「法定帳簿」「任意帳簿」「伝票」「書類」などあやふやになっていた方も知識が整理されたのではないでしょうか?
帳簿づけ自体は慣れればまったく難しくありません。帳簿づけが簡単なことが白色申告の最大のメリットといっても過言ではありません。ですが、手書きやエクセルで簿記をする場合は簿記に関する最低限の知識が求められます。漏れも生じる可能性があります。
やはりクラウド会計を活用するのがおすすめです。初めて確定申告される方は不安も大きいと思います。ですが、しっかりした知識を身につけ、しっかり帳簿づけや書類整理をすれば「収支内訳書」や「確定申告書B」の作成、税務署への提出は案外ハードルが低いものです。
実際「確定申告ってこんなに簡単だったのか」という個人事業主やフリーランサーの声も多く聞きます。本記事をお読みになった方が無事に確定申告を済ませられるよう願っております。