「確定申告書A・Bの違い」について疑問に思ったことはありませんか? 個人事業主なら避けては通れない確定申告ですが、なぜ確定申告書に「A」と「B」があるのでしょうか。具体的になにが違うのでしょうか。
本記事では「確定申告書A・Bの違い」と用途をご説明します。とりわけ初めての確定申告を控えている方はぜひご一読ください。
確定申告書にも種類がある!
すでに個人事業を営んでいる方は、誰にいわれなくとも「確定申告書B」を各書類とともに提出しているのではないでしょうか。では、「確定申告書A」とはどのようなものなのでしょうか? ひいては「確定申告書B」との違いはどこにあるのでしょうか?
それぞれご説明します。
確定申告書A
確定申告書Aは、給与所得者の還付申告など、用途が限定されています。何年も個人事業を営んでいる人にはあまり縁がありませんが、知識として覚えておいて損はありません。後に詳しくご説明します。
確定申告書B
確定申告書Bは誰でも利用可能で、個人事業主はこちらを利用します。確定申告書Aは確定申告書Bを簡略化したものだととらえて差し支えありません。確定申告書Bが正式版といったところです。そのぶん項目が多く、申告に関する広い範囲をカバーしています。
確定申告書Aを提出する人
確定申告書Aを提出する人はおもに「給与所得者」「雑所得があった人」「配当所得があった人」「一時所得があった人」かつ「予定納税」のない人です。予定納税とは、年間の所得税額が15万円以上になった場合『前払い』する税金のことです。また、公的年金受給者かつ事業を営んでおり、事業所得が20万円を超えた人も提出する必要があります
給与所得者
給与所得者のうち、かならず確定申告しなければいけないのは、
- 年間の給与が2000万円を超えている人
- 副業から年間20万円以上の収入を得ている人
- 複数の企業から給与所得を得ている人
以上に該当する人です。また、本来の所得税額より多く源泉徴収された場合、還付申告をすることによって払いすぎた税金が戻ってきます。
雑所得があった人
雑所得については国税庁ホームページにわかりやすく説明されているので引用させていただきます。
雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得のことを指し、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。
「他の9種類の所得」とは次の通りです。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
具体的に雑所得とされる収入はさまざまで、ここでは挙げきれませんが、身近なものを見ていきましょう。いずれも「継続的に相当な労力や時間をかけている」とみなされれば事業所得となってしまいますので注意してください。
- インターネットオークションからの利益
- アフィリエイト収入
- LINEスタンプ販売による利益
- 仮想通貨による収入
雑所得が記載漏れになってしまうと追徴課税の対象になってしまいますので「もしや」と思った収入があれば必ず調べるようにしてください。
配当所得があった人
配当所得とは、
- 企業・投資信託などからの株式配当
- 保険会社からの剰余配当
などです。一般に「配当金」と名の付くものは配当所得と考えて差し支えありません。
一時所得があった方
一時所得とは「継続した営利活動以外から生じた一時的な所得」のことです。
- 生命保険や損害保険の満期一時金
- 懸賞や福引きの賞金品
- 競馬・競輪などの払戻金
といったものが該当します。たとえ副業で突発的に高額な収入が発生したとしても、副業は継続した営利活動とみなされますので、一時所得には該当しません。
確定申告書Bを提出する人
確定申告書Bを提出する人は、言い換えれば「確定申告書Aを利用しないすべての人」です。本記事をご覧の方のほとんども確定申告書Bを提出することでしょう。個人事業を営んでいる限り毎年かならず提出するものです。
個人事業主
個人事業主は確定申告書Bを利用します。確定申告書Aには用意されていない項目にも記載する必要があります。後述しますが、帳簿づけや帳票管理がしっかりしていないと記載できない項目がたくさんありますので注意してください。
所得にかかわらず誰もが利用できる
確定申告書Bは簡略化されていない正式版のような申告書で、用途が限定されていません。ですので、所得にかかわらず、誰でも利用することができます。
確定申告書のAとBの決定的な違いは3つ
確定申告書Aの特徴は「項目が少ない」「確定申告書Bを書くよりも簡単」「帳簿づけや帳票管理の必要がない」の3つにまとめることができます。また、3つの意味を逆に言い換えればそのまま確定申告書Bの特徴となります。
確定申告書BはAより項目が多い
確定申告書Bは、個人事業主やフリーランサーをはじめ誰でも利用できるぶん、広い範囲をカバーしており、項目も多く設けられています。ただし、すべての項目を埋める必要はありません。各事業に応じた項目に記載すれば大丈夫です。
大きな違いはAはBよりも簡単
確定申告書Bは、いわば正式な確定申告書です。青色申告・白色申告にかかわらず、必要に応じてほかの申告書の提出もあります。一方、確定申告書Aは用途が限定されており、書き方も簡単です。それほど知識がない人でも、いざとなったら税務署の職員に聞けば書くことができます。
確定申告書Bはしっかりと帳簿付けする必要がある
確定申告書Bは、年間所得から控除を引いた金額がわからなければ作成できません。そのためには、いうまでもなく日々の帳簿づけや帳票管理が欠かせません。青色申告決算書とともに、日々の取引やお金の出入を把握していなければ書けないものです。日々の経理は、すなわち確定申告というゴールに向かって走るのと一緒です。日々の帳簿づけをしっかりとこなしましょう。
確定申告書の入手方法と提出先
確定申告書の入手方法は複数あります。税務署におもむくのが一番確実ですが、現実的でない場合はほかの手段も検討してください。
各税務署
税務署であればどこの署で入手しても構いません(所轄税務署である必要はない)。税務署の開庁時間はおおむね月曜日から金曜日の8:30~17:00です。年末年始や確定申告シーズンは各税務署によって開庁時間が変わります。ウェブサイトなどで確認してください。
また、必要となる確定申告書類、手引き、申告内容を返信用封筒つきで書き送れば郵送での入手が可能です。わからないことがあれば電話相談してみましょう。
市役所
市役所からも書類の入手が可能です。いつから配布が始まるか、必要な書類などがすべてそろっているか、とくに遠方へ出向かなければいけないときは電話確認しましょう。役所によっては必要な様式が置いていない場合もありますので、あわせて確認してください。
国税庁のホームページからダウンロード
国税庁ホームページに掲載されているPDFファイルを印刷すれば手軽に書類などを入手できます。
自宅にプリンタがない場合、一度PDFファイルをダウンロードしたうえで、USBメモリにデータを入れてコンビニに持参するか、もしくはネットワークプリントサービスを活用してコンビニのマルチコピー機で印刷できます。モノクロ印刷・カラー印刷は不問です。
【まとめ】確定申告書AとBを間違わず提出しよう!
すでに何年も個人事業を営んでいる方は、ごく自然に確定申告書Bを使って青色申告をしていることと思います。ですが、企業から独立した個人事業主のなかには、在職中に確定申告書Aを使った覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。
個人事業主が(たとえ経理を税理士に任せたとしても)自分の責任で確定申告しなければいけないのに対し、企業では経理部門の人が源泉徴収など税に関する大部分の業務を代行してくれたからこそ、在職中は確定申告書Aのみで間に合っていたのです。青色申告決算書と確定申告書B、その他必要書類を提出するために、日々の経理があります。
個人事業主が確定申告する時は、正しく経理を行った結果を申告するために、より厳密な確定申告書Bが用意されていると考えて差し支えありません。確定申告書A・Bの違いを理解したうえで、個人事業主の方は原則として確定申告書Bで提出することを念頭においてください。