確定申告が済んで一段落着いたと思っていたら税務署から連絡が来てびっくりなんていう経験を聞いたことはありませんか。きちんと申告して税金を納めているのにどうして税務調査が来るのか気になりますよね。
この記事では、個人事業主に税務調査が来る10の理由を紹介します。税務調査が来る理由を知り、ポイントをおさえて申告すれば税務調査を避けられるはずです。追徴課税についてもまとめるので、ぜひ参考にしてください。
税務調査とは?
まずは、税務調査とはどんなものなのかまとめます。
徴税機関による申告内容の調査の事
税務調査とは、徴税機関による申告内容の調査のことです。徴税機関とは、国税庁をはじめ、その地方拠点である国税局と税務署のことを指します。個人事業主は、確定申告により事業による収支から所得を計算し、それに基づき算出した税金を申告して納付します。この時の申告内容に不明な点があれば、適正な税額を納めているか確認するために調査を行います。
申告に誤りがあれば是正を行う
もしも申告内容に誤りがあれば是正を行い、適正な税額を徴収することも税務調査の役割です。誤った税額での納税を放置してしまうと、正しく納税している人は損をし誤って納税した人が得をするといった不公平な状況になってしまいます。納税者から公平に税金を徴収するために税務調査を行っているのです。
個人事業主にも税務調査はある?
税務調査というと、いわゆるマルサのように脱税を暴く大規模な査察を思い浮かべるかもしれません。それに比べると個人事業主は規模が小さく、脱税なんてありそうもないのに税務調査は来るのでしょうか。
個人事業主にも税務調査は行われる
結論から言うと、個人事業主にも税務調査は行われます。納税は国民の義務です。映画のような高額な所得隠しはなくても、申告内容に不明点や疑問点があれば、正しい税額を納税しているかチェックするのは当然のことです。事業の規模によって税務調査を行う頻度は違うかも知れませんが、個人事業主にも税務調査が入るということを心得ておきましょう。
個人事業主への税務調査の割合は3%程度
平成29年事務年度における所得税に関する税務調査の件数は、厳正な調査を行う実地調査に加え、電話や文書などによる軽度な接触も含めると622,637件でした。一方、「国税庁レポート 2018」によると、平成29年分の所得税の確定申告を行った人の数は、2,198万人。これを基に計算すると、税務調査の対象になるのは全体の約3%ということになります。
622,637件 / 2,198万人 = 3%
ちなみに、確定申告を行った2,198万人のうち、納税申告をした事業所得者は170万人です。この数字を加味すると、個人事業主への税務調査の割合は3%よりもさらに低いかもしれません。
【参考】国税庁「平成29事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
個人事業主の税務調査は白色申告でもあるのか?
個人事業主の確定申告方法には白色申告と青色申告の2種類あります。青色申告をすると税務調査が来やすくなるといった噂もあり、白色申告を利用している個人事業主もいるようです。それでは、白色申告の個人事業主にも税務調査は来るのか見てみましょう。
白色申告でも調査が必要と見られれば可能性はある
青色申告、白色申告に関わらず、調査が必要と見られれば税務調査が来る可能性はあります。国税に関する業務には国税総合管理システム(通称KSKシステム)が用いられています。
KSKシステムでは申告書の収受や収納・還付などを管理しているほか、納税者に関する資産情報を把握するための様々な情報と連携し、調査対象の選定に利用しています。つまり、青色申告でも白色申告でも管理されている財務データの中からシステムによって分析された調査対象が公平に選ばれるということです。
税務調査が入るのはどんな時?主な10の原因
それでは、税務調査が入るのはどんな時なのか、主な原因を10個見てみましょう。
1:大幅な黒字や赤字による納税額の急激な増減があった
1つめは納税額に急激な増減があった時です。調査する側からすると、例年との変化が大きい時は、なぜ例年と違うのか疑問が生じるからです。例年と違う理由について明確に申告書の備考などに記載しておくとよいでしょう。
2:在庫の急激な増減があった時
2つめは在庫に急激な増減があった時です。在庫に関しても1つめの原因と同じことが言えます。一時的に需要が増減した理由について申告書にわかりやすく記載しておくと安心です。
3:売上や仕入や外注に急激な増減があった
3つめは売上や仕入、外注に急激な増減があった時です。これも前に挙げた2つの原因と同じです。特に外注費は経費として計上するので、増えた場合には経費が多くなってしまい、正確な帳簿付けをしてないのではと疑われる原因になります。例年と違うことは、特記しておくことが大切です。
4:他の同業者と比較した時に経費が多すぎる
4つめは他の同業者と比較した時に経費が多すぎる時です。前項で触れたように、経費が多いと収入に対する経費の割合(経費率)が高くなります。経費率には事業によって大体の目安があるので、同業者と比較して経費率が高すぎると疑いを持たれてしまいます。特に個人事業主は公私の出費を明確に分けにくい側面があるので、多すぎる経費は要注意です。
5:消費税が毎年還付されている
5つめは消費税が毎年還付されている時です。納付ではなく還付の場合、国からすれば一度納められたお金を戻さなければならなくなるので、特に金額が大きい時は間違いがないか確認するために税務調査をします。
6:土地や建物の売却があって売却損益が多額計上された
6つめは土地や建物の売却があって多額の売却損益が計上された時です。不動産の売却に伴い発生する税金を支払ったか、売却価格は適正だったかなど詳しく確認するために調査します。
7:個人資産に大きな変動があった時
7つめは個人資産に大きな変動があった時です。例えば、家や車などを購入した場合は、それだけ事業による収入も増えたのではないかと判断され、調査対象に入りやすくなります。
8:過去に税務調査を受け指導されている
8つめは過去に税務調査を受け指導されている場合です。指導した通りに是正されているのか、税務署が納得するまで定期的あるいは不定期に税務調査が入ります。
9:今まで調査を受けていなかった
9つめは今まで調査を受けていなかった時です。事業を始めて3年から5年が経過してくると、事業が軌道に乗り税務に関する資料もそろってくるので、税務調査ができる状況が整います。その時点で経理の実施状況を一度チェックするということです。
10:数年分まとめて確定申告をした
10個めは数年分まとめて確定申告をしたときです。通常一年に一度申告する必要があるのに数年分をまとめて行えば心証が悪くなり、調査対象に入りやすくなります。
税務調査の追徴課税とペナルティの種類
最後に、追徴課税とペナルティの種類についてまとめます。
申告漏れが発覚した時などに課せられる追加の税金
追徴課税とは、申告漏れが発覚した時に追加で課せられる税金のことです。申告漏れがあった時は、納めるべき税額と実際に納付した額の差額だけでなく、ペナルティとして税金が加算されます。
過少申告加算税
申告内容に誤りがあったため、納付する税金が少なすぎた場合や還付される金額が多すぎた場合に課せられる税金です。なお、税務調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません。
無申告加算税
申告をしていなかった場合に課される税金です。意図的に申告しなかったわけではなく、申告が必要だと知らなかった、忘れてしまったといったケースが当てはまります。なお、税務調査を受ける前に自主的に申告すれば無申告加算税が軽減されるケースや要件を満たせば無申告加算税が課されないケースもあります。
重加算税
いわゆる脱税など、意図的に虚偽の申告をして不正な額を納めた場合や短期間に無申告や虚偽の申告を繰り返した場合に課せられる税金です。
延滞税
納付期限までに税金を支払わなかった場合に課せられる税金です。延滞税は、納付期限の翌日から納付するまでの日数に応じて計算されるので、気づいたらなるべく早めに納付した方が賢明です。無申告で納税が遅れた場合にも延滞税を支払う必要があります。
⇒国税庁「No.9205 延滞税について」
⇒国税庁「延滞税の計算方法」
【まとめ】個人事業主にも税務調査は関係がある
今回は、税務調査について個人事業主でも調査対象になりやすい原因を10個挙げました。税務調査は企業の規模に関わらず個人事業主にも関係があることです。特に申告書に例年とは違う内容が見られる場合には調査対象になりやすい傾向があります。
調査が入ったから悪いということではなく、きちんと帳簿付けをして法律に従って申告し納税をしていれば、調査が入ったとしても恐れることはありません。申告漏れがあると追徴課税を納めることになるので、日頃からしっかり帳簿付けをしわかりやすい申告を心がけましょう。