「個人事業主でも扶養控除に入れるの?」「扶養に入ってって言われたけど、そもそも扶養控除って…?」「個人事業主が扶養控除を使うためには?」などなど…個人事業主と扶養控除について知りたいと思っている方は多いのではないでしょうか。サラリーマンや専業主婦だけでなく、個人事業主にとっても扶養控除は活用できる大事な制度です。
この記事では、個人事業主の扶養控除について、対象や具体的なメリット・控除額などについて税金初心者でも分かりやすく簡単に理解できるように解説していきます。
扶養控除って何?
「扶養に入る」って聞いたことはあるけど、具体的にどうなるのかよく分からない方も多いかと思います。扶養控除は、養っている家族などがいる場合に支払う税金を減らしてもらえる制度のこと。
以下では、扶養控除とは何なのかについて分かりやすく説明していきます。
養っている家族や人がいる場合に控除を受けられる制度
扶養控除は、扶養(養っている)家族などがいる場合に税金の控除を受けられる制度のことです。「控除」という言葉は税金の申告関係でよく使われる言葉。「一定の金額を差引くこと」を控除といいます。
養っている人がいる場合、一定の条件を満たせば所得(稼ぎ)から一定の金額が引かれて、結果として支払うべき税金が安くなったり払い過ぎた税金が戻ってきたりします。これが扶養控除です。
支払う所得税や住民税が減税される
扶養控除を利用すると、支払うべき所得税や住民税が安くなります。すでに源泉徴収されて税金を支払っているサラリーマンなどの場合には、支払いすぎた税金がかえってきます。どれくらい減税されるかは所得や養っている人が誰なのかによって異なりますが、「利用するなら利用しておかないと損」といえるくらいには効果がある節税方法です。
扶養控除の対象となるための7つの条件
誰かを養っていれば必ず扶養控除を利用できるのかというと、そうではありません。定められた対象の人を養っていて、それに加えて一定の条件を満たしておかなければなりません。以下では、扶養控除をつかうための条件について説明していきます。
配偶者以外であること
配偶者は扶養控除の対象となる扶養親族ではありません。配偶者とは、結婚相手、つまり妻や夫のことです。妻を養っていても扶養控除を使えないと言われると意外に思われるかもしれませんが、配偶者を養っている場合には扶養控除ではなく「配偶者控除」を利用できます。扶養控除とはまた違う制度なので気を付けましょう。
配偶者以外の6親等内の血族及び3親等内の姻族
養っていれば扶養控除を使えるという「扶養親族」の範囲は、「配偶者を除く6親等以内の血族および3親等内の姻族」です。これらの人を養っていて他の条件を満たせば扶養控除を利用できます。
法律用語が出てきて少し難しいと思った方もいるでしょうから補足します。
「血族」とは、自分の血縁者・親戚や家族のことです。
「姻族」は、自分の配偶者の血縁者や家族のことです。
「親等」は、自分から見てどれくらい血縁関係が離れているかを表す数字です。
たとえば、両親は1親等、祖父母は2親等離れています。兄弟の親等は、いったん親に戻ってからカウントするので2親等です。
その年の12月31日の時点で16歳以上である親族
「配偶者を除く6親等以内の血族および3親等内の姻族」という条件を満たす人を養っていても、それだけでは扶養控除は使えません。まず、その養っている相手がその年の12月31日時点で16歳以上でなければなりません。
納税者と生計を共にしている人
さらに、16歳以上の扶養家族が、生計を共にしていなければ扶養控除は利用できません。法律上の表現は「生計を一にする」となっています。
この条件を満たすためには、必ずしも同居していなくてもよいとされています。たとえば大学生の子供が家から離れて下宿している場合などでも、生活費や学費を仕送りをしていれば「生計を一にしている」として扶養に入れることができます。
年間合計所得金額が38万円以下の人
生計を一にする扶養親族であっても、その親族の年間合計所得金額が38万円以下でなければ扶養に入れることはできません。一定額以上稼いでいる親族ですと、仕送りなどで支えても税金上は養っているとは認めてもらえないわけです。
給与収入が103万円以下の生計を共にする人
扶養親族が38万円より稼いでいる場合でも、扶養に入れられる例外的な場合があります。それは、その親族の「稼ぎが給与所得だけ」の場合です。この場合、給与収入が103万円以下の生計を一にする扶養親族なら、扶養に入れられます。
勤めに出ていて給料をもらっている、稼ぎはそれだけ、という場合です。自分で事業をしていてそこからの稼ぎがある場合や、不動産からの収入がある場合などには原則通り「年間所得38万円以下」でなければなりません。とはいえ、実際には稼ぎは給料だけというパターンが大多数ですので原則よりも例外に当てはまるケースの方が多いでしょう。
青色申告専従者や白色申告専従者じゃない人
上記の条件全てを満たしている人であっても、青色申告専従者や白色申告専従者ですと扶養に入れられません。
個人事業主は一定の人を事業専従者と届け出ることで、その人に支払う給料を必要経費として計上できるようになります。他の制度で必要経費だと認められているから、扶養控除まで使わせてあげる必要はないとの判断です。事業専従者って何?って人は届出していないでしょうから、まず問題はありません。
扶養親族の年齢によって控除額は変わる
扶養控除で所得から差し引ける控除額は、扶養親族の年齢などによって変わってきます。
原則:その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の場合
扶養に入れられる人の条件は16歳以上であることでした。例外的な3つの場合に該当しない場合、「38万円」が控除されます。
その年の12月31日現在の年齢が19歳~23歳未満の場合
例外その1は、扶養親族が19歳以上で23歳未満の場合(19・20・21・22歳)です。大学生などの年齢ですね。この場合、63万円が控除されます。原則の場合よりも倍ちかく恩恵を受けられるわけです。
その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の同居老親等以外の場合
例外その2は、扶養親族の年齢が70歳以上で「同居する老親(親や祖父母など)」ではない場合。70歳以上の兄弟や親戚、別居している70歳以上の親などの場合です。この場合、48万円が控除額となります。
その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の同居老親等の場合
例外その3は、扶養親族の年齢が70歳以上で同居する老親等である場合です。この場合、58万円が控除されます。
ちなみに、同居している老親でなければこの58万円の控除は使えませんが…病気治療のために入院している場合、同居しているとみなされます。ただし、老人ホームなどに入所していたら同居しているとは判断されません。
税金の扶養控除を利用するメリットについて
扶養に入ったり入れたりすると、どのような利点・うまみがあるのでしょうか。以下では、扶養控除を使うメリットについてご説明します。
支払う税金が安くなる
扶養控除を利用すると、支払う所得税や住民税の額が安くなります。源泉徴収などですでに税金の一部を支払っている場合、払い過ぎた税金が返ってくる場合もあります。税金が安くなるというメリットは、扶養に入れた側(=扶養控除を利用した側)が受けられるメリットです。扶養に入れられた側のメリットは特にありませんが、デメリットも特にありません。
入れた側はメリットが大きく特にデメリットもない、入れられた側もデメリットがない。だとすると、あまり稼ぎが多くなくて、誰の扶養にも入っていない家族がいる場合には必ず扶養にいれておく方が良いということになります。
社会保険などの「扶養」とは別物
「扶養に入れられるとデメリットがあるって聞いたことがあるけど…?」このような方は、税金上の扶養と、その他の社会制度上での扶養を混同してしまっている可能性があります。両者はまったく別者の別制度です。
税金で扶養に入れて扶養控除を使ったからからといって、社会保険などで扶養に入れることとはなりません。社会保険などで扶養に入れる場合には、これまで紹介してきた条件などとはまた違う条件を満たさなければなりません。
税金上の扶養は双方にとってデメリットはない、これは覚えておくといいでしょう。
個人事業主でも扶養家族になれる?
家族に扶養してもらっているけど、個人事業主になっても扶養に入ることはできるのでしょうか。
条件を満たしていれば個人事業主でも扶養に入れる
扶養控除の条件を満たしていれば個人事業主であっても扶養に入れますし、すでに扶養に入っている場合でも外れることはありません。
毎年確定申告を受ける事
個人事業主の場合、毎年自分の所得を明らかにする確定申告をしなければなりません。扶養に入れるかどうかの条件には所得も含まれていますから、必ず確定申告をして自分の所得を明らかにしておきましょう。
扶養から外れないために個人事業主になったけど確定申告をしないなどの行為は、脱税行為にあたってしまいますのでご注意を。
年収を一定額に抑える必要がある
扶養に入るためには、年収を一定額におさえておく必要があります。
個人事業主の場合、得られる稼ぎは通常給与所得ではなく、事業所得となります。「給与所得のみ得ている場合には年収103万円以下」との特例は使えませんので、「年間所得が38万円以下」との条件を満たさなければなりません。
ただ、年商ではなく所得(利益)が38万円以下であるとされているので、たとえば60万円稼いでいたとしても25万円が経費なら所得は35万円として扶養に入れます。
【まとめ】個人事業主も扶養控除を受ける事ができる!
個人事業主の方は、扶養控除を使おうか&扶養に入ろうかなどと悩むことも多いかと思います。税金上の扶養は入れる側にも入れられる側にもデメリットはありません。ただし、扶養に入るためには一定の条件を満たす必要がありますので、しっかり確認しておきましょう。