「脱税の疑い」
「税務調査」
個人事業主の方は、この言葉にどうしても敏感になってしまいます。
「きちんと確定申告して帳簿も領収書もつけているけど、脱税と疑われたくない」、「自分の処理の仕方で問題はないのだろうか?」そう不安になっている個人事業主の方のために、脱税だと疑われないためにおさえておきたい知識やポイントをご紹介していきます。
- まだ確定申告になれていない
- 税務調査が怖い
- もし脱税と判断されたらどうなる?
そのような方のために、この記事では脱税だと疑われないための4つのポイントの他、必要な心構えなども紹介しています。確実な知識を丁寧に解説しますので、読んで備えて心を落ち着かせましょう。
個人事業主になったら注意したい脱税行為
個人事業主は、税金に関する処理を自分の責任で負わねばなりません。ノウハウや専門家がそろっている会社とは違って、知らず知らずのうちに脱税行為をしてしまうこともありますが…責任逃れはできませんし、知らなかったでは通用しないもの。
以下では、個人事業主が注意しておきたい「脱税に該当する行為」をご紹介します。やってはならないことをまずおさえましょう。ポイントは、利益(売上や経費)をごまかさないこと。
売上を少なめに申告する事は所得隠しと言われる脱税行為です!
年商、つまり売上を実際よりも少なく確定申告で書いてしまうと「所得隠し」といわれる脱税行為になってしまいます。実際には、1月に50万円売上があがっていたのに30万円とごまかしてしまうと脱税になってしまうのです。
物を売らないサービス業のフリーランスである場合、振込額をごまかす行為が所得隠しに当てはまります。銀行口座の出入りは税務署がすぐ把握できる情報で、ごまかしがきかないので特に注意が必要です。
仕入や経費を多く水増しする
確定申告では、売上から仕入れ額や経費を引いて「利益」「所得」を確定させていきます。実際には使っていない・かかていない経費を計上してしまうと、これも所得のごまかしにあてはまってしまい脱税行為となってしまいます。
小売り業の場合 在庫を意図的に減らす
物を売る小売り業の場合、在庫の量も税金と関係してきます。不要在庫を減らすのは立派な節税行為ですが、実際の在庫よりも意図的に少なく計上してしまうと脱税行為となります。在庫が減ると利益が減り、支払う税金の額も減ることになります。支払う税金と関係する在庫をごまかすと、脱税としてアウトとされてしまうのです。
領収書を偽造する
確定申告の時期になると、レシートをゴミ箱から集めるなどの行為が見受けられますが…実際に経費として使ったわけではないお金に関する領収書は、確定申告では使えません。領収書を偽造したり、無関係な人のものをもらったりして経費に計上すると、脱税行為となってしまいます。
人を雇っていないのに人件費を計上する
雇ってない人を雇っていたことにして人件費を計上するのもアウトです。これも領収書の偽造同様、経費のごまかしに当たります。
白色申告でもある!個人事業主に税務調査が来る確率
「自分は確定申告は青色申告じゃなくて白色申告だから大丈夫だろう…」そう思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、白色申告であろうと個人事業主の元に是無調査が来る確率は十分にあります。どんな基準や選ばれ方で税務調査がやってくることになるのでしょうか。以下で説明します。
一生に一度は必ず来ると思って間違いはない
税務調査は全個人事業主のうち毎年3~5%程度に入っていると言われています。そんなに多くないな…と安心してはいけません。事業を長く続けていると、自分のところが選ばれる確率はどんどん上がっていきます。むしろ、個人事業主をやっていると一生に一度は必ず税務調査に遭遇するんだ、くらいの考えを持っておいた方がいいでしょう。
年商が多ければ多いほど確率は上がる可能性は高い
もちろん、あまり稼いでいない個人事業主の場合、税務調査の対象となる可能性は低いのは事実。稼ぎや年商が多ければ多いほど、税務調査に入られる確率は上がっていきます。急に年商があがっていっている場合などにターゲットとなりやすいのも事実です。
名前が知られると税務調査を受けやすい事もある
「うちは無名な零細事業だから大丈夫でしょう…」と思っている方。確かに、名前が知られて有名になると税務調査を受けやすい傾向はみられるようです。メディアに出て名前が知られた場合など、いつ税務調査に入られても大丈夫なように、いつも以上にしっかりと帳簿付けを心がけましょう。
税務調査が入る基準は1000万円は本当!
「年商が1000万円を超えると、税務調査に入りやすくなる」との噂があります。この噂はデマだとする声もありますが、1000万円基準説は本当です。年商が1000万円を超えますと、消費税を納める対象となりますし、稼ぎが個人事業主としては大きくなりがちです。
ただし、1000万円未満なら税務調査に入らないかというとそうでもありません。年商800万円だとか900万円だとか、ぎりぎり消費税の対象外だと申告している個人事業主も税務調査のターゲットとなります。また、同一業種の他の業者などと比べて利益率が高すぎるケースなども、年商1000万円未満で税務調査を受ける典型例です。
もし脱税だと判断されたらどうなるのか?
脱税行為はせず、税務調査も受けない。それに越したことはありませんが、仮に脱税だと判断されてしまった場合にはどうなるのでしょうか。最悪の場合を知っておくことは必要ですから、脱税行為に該当してしまった場合の罰則や処分についてご紹介をします。
過少申告加算税がくる
わざとではないけど所得を少なく申告(過少申告)をしていた場合、過少申告加算税を支払わなければなりません。過少申告していた場合、正しい所得に応じた税金額となるように追加で税金を支払わなければなりません。過少申告加算税は、この新たに支払う税金の原則10%に該当する額となります(50万円を超える部分については15%)。税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告をすると、過少申告加算税はかかりません。
無申告加算税がくる
確定申告の期限までに申告書を出さなかった場合(無申告)、無申告加算税が課されます。
無申告加算税の税率は、本来支払う税金の15%(50万円を超える部分については20%)です。ただし、税務署などから指摘がないうちに自主的に申告すると5%で済みます。
重加算税がくる
所得隠しなど脱税行為を意図的に行っていた場合、課されるのが「重加算税」です。
3つの加算税の中では一番税率が高く、過少申告していた場合には新たに支払う税金の35%、無申告に該当していた場合は新たに支払う税金の40%を支払わなければなりません。
延滞金がつく
借りたお金を期日通りに返さなかった場合には延滞金を支払う必要がありますよね。これと同様、本来支払うべき税金を期日までに支払わなかった場合には「延滞税」を支払わなければなりません。
延滞税は本来支払う税金に対して発生する税金で、加算税には課されません。また、加算税とは別の制度ですので、加算税と延滞税双方が課されることもあります。きちんと正しい額で確定申告をしたけど、納付期限までに税金をおさめなかった場合にも課税されます。
個人事業主に対しての税務調査の期間は?
個人事業主に対する税務調査は、いつ頃の時期に行われるのでしょうか。確定申告の期間を除けば、税務調査は年中行われています。しかし、お役所の仕事ですから、時期・期間には傾向があります。
個人事業主への税務調査は、4~6月が要注意です。
税務調査は確定申告が終わる3月~6月の間
まず知っておきたいのが、1月から確定申告期間が終わる3月までは基本的に税務調査は行われないこと。税務署も他の業務で忙しい時期なので控えているのです。
そして、税務署は年度の切替えが3月・4月ではなく、6月・7月となっています。ですから、7月から12月までは年度も新しくなり気合いが入っている期間。この期間が税務調査に要注意なのでは?と思われる方も多いでしょう。しかし、この時期は個人事業主よりも企業などへの税務調査に本腰を入れる傾向にあります。
そこで、残った3月末から6月までの間が、個人事業主が税務調査で狙われやすい時期となります。この時期にはいつ税務調査が入ってもおかしくないなと想定しておきましょう。
脱税だと思われないためにできる4つの事
脱税をしていると思われないために、個人事業主は何か工夫や対策をできるのでしょうか。以下では、脱税と疑われないために今日からできる4つの注意点を簡単にご紹介します。
1.貯蓄率以上の預貯金が無い事
税務署から疑われないためには、目立たないことが一番です。そこで意識したいのが「貯蓄率」。これは、使えるお金に対する預貯金の割合のこと。
働いている現役世代の平均貯蓄率は、年代ごとにばらつきはありますが15~25%となっています。これを大きく超えてしまうと、「稼ぎの割には貯蓄が多い疑わしい事業主だ」とされてしまいかねないのです。
「貯金はいいこと」だと思ってしまいがちですが、事業をやっていく上では必ずしもいいこととは言えないんですね。
2.収支のバランスが取れている事
個人事業主が仕事を続けていくためには、入って来るお金と出ていくお金のバランスが取れていなければなりません。しかし、収支のバランスがとれないにも関わらず事業を続けているとなるとどうでしょうか。他から見ると、「収益をごまかしているのでは?」と脱税を疑ってしまいます。
事業を健全に続けていくためにも、不要な税務調査を避けるためにも、収支のバランスには気をつけましょう。
3.急激な預貯金の変化や業績の変化を避ける
税務署は急激にお金や業績に動きがある人に目を付けます。もちろん、急激に事業が成長したからといって必ずしも税務調査が入るわけではありませんが…やはり目立たないに越したことはありません。
急激な預貯金や業績の変化はできるだけ避けるようにしましょう。
4.できれば税理士に納税関係をお願いする
なんでも自分でこなす個人事業主。だからこそ、税金の処理や確定申告もひとりで済ませてしまうって人も少なくはありません。しかし、税理士がかかわっていない事業者は、やはり税務署から疑われやすくなります。
できれば納税関係は専門家である税理士にお願いするようにしておくといいでしょう。
【まとめ】個人事業主になったら脱税を疑われないようにすべき!
個人事業主は、脱税や税務調査などのワードに敏感になり不安になってしまいがちです。もちろん過度の心配は精神衛生上よろしくありませんが、個人だから大丈夫などと大雑把な税金処理をしていると脱税と判断されて大変なことになってしまいかねません。
個人事業主を続けていれば一生に一度は経験するであろう税務調査。そこで脱税とみなされないためにも、個人事業主になったら脱税を疑われないようにしっかりと対策をしましょう。