個人事業主への消費税の請求はどう決まる?控除を利用して賢く納税するため必要な情報、課税売上高や収支、期間の確認を。払わなくて良い場合もあります。
そもそも事業と消費税はどんな関係があるのか?
個人事業主が納める税金には、住民税・個人事業税・所得税そして消費税があります。このうち消費税納付については事業の収支に応じて課税制度を選択し、届出書を提出しなければなりません。確定申告により、税額が決定します。納付期限は毎年3月31日です。
消費税とはサービスや対価に対して払う税金の事
国内で事業として、事業者が対価を得て行う資産の譲渡、貸付け、役務の提供および外国貨物の引取りが消費税の対象となります。課税しない取引には、土地の譲渡及び貸付け・住宅の貸付け・外国為替業務・社会保険医療の給付等・保険の対象となる医療・介護保険サービスの提供・社会福祉事業等によるサービスの提供・火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供・学校教育関連等があります。
事業者はもらった消費税を税務署に納税する義務がある
消費税を負担するのは消費者となりますが、生産及び流通のそれぞれの段階で事業者が受け取って納税します。
全ての個人事業主が消費税を納めるわけではない
課税売上高等によって、事業者が消費税を納めるか決まります。課税事業者となる条件は、以下のパターンです。
- 特定期間で課税売上高1,000万円超えた場合
- 基準期間で課税売上高もしくは給与等支払額いずれかが1,000万円超えた場合
- 資本金の額または出資の金額が 1,000 万円以上の場合
- 免税事業者が課税を選択した場合
課税売上高が1,000万円を超えた場合納税する必要がある
1月1日から12月31日の基準期間で課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々年より納税となります。そのため開業から2年間は免税となります。
消費税の届け出書類は4種類
納税方法が確定次第、すみやかに届出書を提出します。次の4種類があります。
消費税課税事業者届出書(基準期間用)
年間の課税売上高が1,000万円を超えた場合に税務署へ提出します。基準期間の翌々年に課税開始となります。
消費税課税事業者届出書(特定期間用)
1月1日から6月30日の特定期間で、売上が1,000万円を超えた場合に提出します。翌年から消費税の申告・納税が必要です。
消費税簡易課税制度選択届出書
免税事業者が課税事業者になるため税務署へ提出します。輸出事業者など、仕入税額控除により消費税額の還付を受ける場合こちらを選択します。
消費税の納税義務でなくなった旨の届出書
基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり、課税事業者から免税事業者へ変更となる場合に提出する届出書です。提出期限は決められておらず、必要になれば速やかに提出します。
簡易課税について
消費税の計算方法は2種類、「一般課税」と「簡易課税」があります。
課税売上高5,000万円以下の事業者が利用できる課税区分
簡易課税を選択できるのは課税売上高が5,000万円以下の事業者です。みなし仕入率は事業形態ごとに、第一種から第六種まで6つに区分されています。
第一種事業
卸売業(他の者から購入した商品を性質、形状を変更せず他の事業者に対して販売する事業)みなし仕入率90%
第二種事業
小売業(他の者から購入した商品を性質、形状を変更せず販売する事業で第一種事業以外)みなし仕入率80%
第三種事業
農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業。第一種事業、第二種事業に該当するものと、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。※2019年10月1日を含む課税期間からは、農業、林業、漁業のうち、消費税の軽減税率が適用される「飲食料品の譲渡に係る事業区分」が第三種事業から第二種事業へ変更となります。みなし仕入率70%
第四種事業
第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業。飲食店業など。みなし仕入率60%
第五種事業
運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業、第一種事業から第三種事業までに該当する事業を除いたもの。みなし仕入率50%
第六種事業
不動産業。みなし仕入率40%
一定のみなし仕入れ率をかけて簡略化する事ができる
一般課税の場合は課税期間における課税売上に対する消費税から仕入・経費への消費税を引き納付しますが、簡易課税では課税売上に掛かる消費税額へ、事業に応じた「みなし仕入率」を掛けて計算します。 仕入れ等の消費税額計算は不要、売上高のみで簡易に納税額を算出・申告できます。
節税効果が得られる事もある
一般課税より消費税額が軽減される場合があります。
消費税簡易課税制度選択届出書を提出している必要がある
簡易課税を選択するには、届け出が必要です。提出した翌年から有効ですので、課税期間開始前に実施しましょう。基準期間における課税売上高が5,000万円以下であることが条件です。簡易課税制度の適用を受けると、2年間は継続となり変更できません。
消費税を払わなくて良い免税事業者とは?
課税売上高や事業の形態により、消費税が課されない免税事業者となる場合があります。
小規模な事業者や個人事業主の事
特定期間で課税売上高1,000万円超えた場合か、基準期間で課税売上高もしくは給与等支払額いずれかが1,000万円超えた場合は課税事業者として消費税を納めます。個人事業主は給与支払い0円となり、免税事業者としての条件に当てはまります。資本金の額、または、出資の金額が1,000万円以上でない場合も免税事業者となります。
前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下である
基準期間の翌々年より消費税を納めるため、小規模な事業者であれば設立から2年は免税事業者となることが一般的です。
免税事業者も消費税を請求する事は現時点では可能である
免税事業者は消費税の納税義務が免除されますが、顧客から消費税を受け取っています。現時点でこの請求は法律上可能であり、納税されず事業者の手元に残る益税となります。
【まとめ】個人事業主全てが消費税を払うわけではない!
以上が個人事業主として、確定申告の際に知っておくべき仕組みになります。課税売上高の増減や特定期間などの条件から、速やかに必要となる届出があります。支払い義務を果たし節税するため常に確認し、適切な方法で納税しましょう。