「住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、税金の手続ってどうすればいいの?」こう悩んでいる方は多いことでしょう。住宅ローンを組んで家やマンションを買ったら、確定申告をして「住宅ローン控除」の手続きをしなければなりません。
確定申告といえば個人事業主やフリーランスの人がやるもので、サラリーマンには関係ないでしょ?と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、住宅ローン控除を使いたい場合にはサラリーマンでも確定申告をしなければなりません。
この記事では、確定申告が初めての方でも理解できるように、分かりやすく住宅ローン控除の手続のポイントや手順・必要書類、そして注意点について解説していきます。
確定申告初めての人もわかる!住宅ローン控除とは何か?
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでいる人のための税金優遇措置です。年末のローン残高に応じて、所得税や住民税などが返ってくる仕組みのこと。
確定申告という自分の所得などを報告する手続を踏まなければ、住宅ローン控除の恩恵は得られません。面倒に感じるかもしれませんが、割と返ってくる額は大きいので必ず控除手続きを済ませておきたいところです。
住宅ローンを組んでる方への税金の特例制度
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ方への税金の特例制度のことです。
税金の話でよく出てくる「控除」というワード、これが出てきただけで難しそうだなぁと思ってしまいますが…。「控除」とは「税金額から一定の額を差し引いてもらえる恩恵」のこと。「控除=良いこと」との認識を持っておいてもらってまず間違いありません。
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んだことによる税金の恩恵措置。住宅ローンの残高を税金額から差し引き、その額に応じて支払った税金が返ってきます。
年末の残高の一定割合の金額所得税や住民税から戻ってくる
住宅ローン控除では、具体的には年末時点で「ローン残高の最大1%」が所得税から差し引かれ、納めた分の金額が戻ります。所得税だけで還付(還元)しきれなかった場合には、住民税から戻ってきます。
住宅ローン控除は、所得から差し引く「所得控除」ではなく、差し引かれる金額そのものが返ってくる「税額控除」なので、想像以上の金額が返ってくるのが特徴です。
確定申告を行う事で控除を受ける事ができる
住宅ローン控除を受けるためには、個人事業主であってもサラリーマンであっても確定申告を行わなければなりません。
会社などに雇われて給料をもらっている勤め人(サラリーマン)は、確定申告をしなくても会社側が年末調整をしてくれます。ですから、サラリーマンは通常、税金に関する手続は自分でやらなくても済みます。しかし、住宅ローン控除の恩恵を受けたい場合には例外で、年末調整では対応してくれないので、自分で確定申告をやらなければならないのです。
住宅ローン控除を受けるために行う確定申告が初めての確定申告だ、という方も多いはず。以下では、そんな初めて確定申告をする方のために必要な説明をしていきます。
初めての確定申告で住宅ローン控除を受けるメリット
「住宅ローン控除って、初めてで分からないことだらけ面倒そうな確定申告手続をしてでも受けるべきものなの?」…と疑問に思われる方も多いでしょう。確かに、控除がなくても毎年確定申告をしなければならない自営業の方と比べると、サラリーマンの方はなかなか確定申告をする気力が沸かないと思います。
しかし、住宅ローン控除で戻ってくる額は想像以上に大きな額で、大きなメリットがあるんです。
一般的な住宅ローンの場合は40万円戻ってくる
一般的な住宅の住宅ローンですと、住宅ローン控除によって年間最大40万円まで所得税・住民税が返ってきます。
住宅ローン控除は10年間、毎年年末時点での「ローン残高の1%」に相当する税金が、「毎年40万円まで」戻ってくる制度。
ですから、一般住宅の場合でも、10年間で最大400万円まで戻ってくることになります。
組んでいる住宅ローンの残高が6000万円の年の場合、その1%は60万円ですが、一般的な住宅のローンですと最大40万円ですので控除され戻ってくるのは40万円となります。また、ローン残高の1%が40万円未満の場合にはその金額だけ戻ってくることとなります。住宅ローン残高が2000万円の年ですと、その1%は20万円ですので20万円戻ってくるわけです。
ちなみに、そもそも納めている税金が控除額よりも少ない場合には、その額までしか控除されません。その年に収めた所得税・住民税が15万円でしたら、住宅ローン控除として引かれるのは最大15万円までとなります。
認定長期優良等だと50万円戻ってくる
住宅ローンを組んで建てた住宅が、「認定長期優良住宅等」でしたら年間最大50万円まで住宅ローン控除が認められます。最大50万までの控除が認められる特例は、以下の2つの場合です。
- 認定長期優良住宅
- 認定低炭素住宅
(※双方とも一戸建て住宅の場合のみで、マンションなどは含まれないのでご注意を。)
認定長期優良住宅とは、長期間にわたって良い状態で家を使うための措置が講じられた優良住宅のことです。これに該当するためには、事前に建築計画をたてて市町村に認定を受けなければなりません。
認定低炭素住宅とは、二酸化炭素排出量が少ない省エネな住宅と認められた住宅のことです。これに該当するためには、事前に建築計画をたてて市町村による認定を受けている必要があります。
一般住宅と長期優良住宅とでは、「受けられる控除額=戻ってくる税金額」が年間で最大10万円、10年間ですと最大100万円も違ってきます。毎年支払っている税金額が40万円を超えていて、住宅ローンも4000万円を超えるようであれば、認定長期優良住宅として建築できないかどうか専門家と相談するといいでしょう。
確定申告で住宅ローン控除に必要な書類について
初めての確定申告で住宅ローン控除を申請する場合、どんな手続でどのような書類が必要になるのか分からないかと思います。以下では、確定申告で住宅ローン控除を申請する際に必要な書類をご紹介します。
源泉徴収票
サラリーマンの場合、所得の合計を確認するために会社から渡される「源泉徴収票の原本」が必要となります。年末調整のときに渡されるので、特に入手するための手続は不要です。なお、個人事業主やフリーランスであっても、源泉徴収されている場合には各社から源泉徴収票が送付されますので、それを揃えておきましょう。
マイナンバーカードなどのコピー
確定申告書にはマイナンバーを書かなければなりません。さらに、マイナンバーがわかる書類のコピーも添付する必要があります。
- マイナンバーカードがある場合、その表と裏のコピーを添付しましょう。
- 通知カードがある場合、そのコピーに加え、運転免許証などの本人確認書類のコピーを添付しましょう。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は、確定申告書と合わせて提出する申告書となります。税務署などに置いてある他、国税庁のHPからダウンロードして入手できます。
借入金の年末残高等証明書
ローンの年末残高などの詳細が記載された書類で、住宅ローンを組んだ機関から送られてきます。
家屋・敷地の登記事項証明書
土地と建物についての登記に関する書類です。こちらは司法書士にお願いして取得してもらえますし、法務局にいって自分で発行してもらうこともできます。自分でやる場合には、法務局で「住宅ローン控除に使う」と伝えれば対応してもらえます。
売買契約書や請負契約書のコピー
購入した住宅に応じて、契約書のコピーが必要となります。
たとえば、分譲一戸建て住宅を買った場合には、「建物についての売買契約書」、マンションを買った場合「マンションの売買契約書」が必要です。注文住宅をたてた場合ですと、「建物の請負契約書」と「建築工事請負契約書」が必要となります。
【特例】低炭素建築物や認定長期優良住宅の認定通知書
特定の認定長期優良住宅等の住宅ローン控除を使おうとする場合、不動産業者などから引渡しの際にもらった「認定通知書」が必要となります。
【特例】住宅用家屋証明書
住宅用家屋証明書は、特例の認定長期優良住宅等の建築後に渡される書類です。認定通知書とセットで渡されることが多いので確認しておきましょう。
【特例】建築証明書
建築証明書は、特例の認定長期優良住宅等についての建築証明書です。(※認定通知書・家屋証明書・建築証明書のいずれか1つを提出するだけで良いです。)
【特例】耐震基準適合証明書
新築でない中古物件を購入した場合、耐震基準に適合していなければ住宅ローン控除を使えません。築20年以上の木造住宅や築25年以上のコンクリマンションを購入した場合、「対基準適合証明書」が別途必要となります。
【特例】建築住宅性能評価書のコピー
新築の場合、「建築住宅性能評価書」か、「住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書」が必要となります。
【特例】既存住宅売買疵担保責任保険契約に係る付保証明書
築20年以上の木造住宅か築25年以上のマンションを購入した場合、「対基準適合証明書」か、この書類のいずれか1つが必要となります。
2年目以降のやり方と必要書類について
以上の必要書類と手続の手順は、すべて1年目のものです。一度、初めての確定申告で住宅ローン控除に必要な手続をした後、2年目以降は手順や書類はグッと少なくなります。
個人事業主・サラリーマン共に提出する証明書の数は少なくなる!
サラリーマンの場合、2年目以降は確定申告の手続は不要で、会社に書類を出せば年末調整で自動的に控除されるようになります。会社に提出するのは、以下の2つです。
- 税務署から送られてくる「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」(必要事項を記入して会社に提出)
- 金融機関から送られてくる「残高証明書」
個人事業主の場合は、毎年確定申告の手続きをしなければなりません。が、サラリーマンと同様、提出する書類の数は少なくなります。個人事業主は2年目以降は税務署で入手できる「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と住宅ローン機関から送られてくる「残高証明書」の2点を提出しましょう。
確定申告で初めて住宅ローン控除を受ける時の5つの注意点
住宅ローン控除を確定申告によって受ける場合、いくつかの条件があるので気を付けましょう。特に注意したい5つのポイントについて説明します。
マイホームを購入する時の住宅ローン限定である点
住宅ローン控除を受けるためには、ローンで購入した物件が自分の居住用の「マイホーム」でなければなりません。「アパートを建てて他人に貸そう」などという投資用物件で住宅ローンを借りても、住宅ローン控除の恩恵にはあずかれないので気を付けましょう。
所得が3000万円いかである点
住宅ローン控除を受けるためには、「控除を受ける年の所得が3000万円以下」でなければなりません。3000万円を超える場合には、十分に稼いでいるから恩恵は不要だろう、ということとなっているのです。
10年以上の住宅ローンのみである点
住宅ローン控除を受けられるのは、「組んだローンの返済期間が10年以上の場合」のみです。組んだ住宅ローンの返済期間が8年などの場合には、住宅ローン控除を使えない決まりになっているのでご注意を。
入居した年と住宅ローン契約の翌年だと1年損する点
住宅ローン控除を受けられる期間は、「入居した年から」10年です。入居した年に住宅ローンを契約していないと、その年に適用できる住宅ローン契約が存在せずその年は住宅ローン控除を使えないこととなります。その結果、9年分しか住宅ローン控除を使えず、1年分を損してしまうのです。
たとえば、2020年12月に入居し、2021年1月に住宅ローンを契約した場合、2020年分の住宅ローンは使えず、2021年分から9年間のみ住宅ローン控除が使える事態となってしまいます。
共有持分の割合によって贈与税がかかる事もある!
住宅ローンを組んで購入したマイホームを、夫婦などで共有にすることがあるかもしれません。
たとえば、夫が自分の名義で全額住宅ローンを組み、購入した家は夫婦で半分ずつの共有持分とした場合を考えてみましょう。この場合、住宅ローン控除に使えるのはローンの2分の1の額だけです。
ローン控除を全額使えないだけではありません。ローンの名義は夫なのに、買った住宅の半分は妻のものとしてしまうと、家の半分の部分が夫から妻への贈与になってしまい、贈与税の対象となってしまうこともあります。住宅ローン控除を使う際、購入した家の共有持ち分には気を付けましょう。
確定申告で初めての住宅ローン控除のまとめ
住宅ローン控除を初めて受ける場合には、サラリーマンであっても確定申告をしなければなりません。面倒そう・大変そうと思うかもしれませんが、必要書類の大半は住宅購入の際にすでに揃っているものです。
また、初年に確定申告をすれば、サラリーマンの方は2年目以降は会社に書類を出すだけで済みます。
初めて住宅ローン控除をするときには、気を付けなければならない条件などもありますので、それらを踏まえた上で住宅ローンを組みマイホームを入手するようにしましょう。