納税は国民の義務とは言うものの、できれば賢く節税し、手元に残るお金を増やしたい。正直なところ、誰でもそう思いますよね。年が明けると確定申告の時期が近づいてきます。フリーランスの方も適切に申告し、税金を納めなければなりません。
今回は、フリーランスの税金対策について、6つのポイントと怪しまれないコツを紹介します。税金のことをあまり考えたことがないという方も、次の申告に向けてぜひ参考にしてください。
フリーランスの税金対策の6つのポイント
それでは早速、税金対策でフリーランスの方ができる6つのポイントを紹介します。
1:面倒でも青色申告をする
1つめのポイントは、面倒でも青色申告を利用することです。フリーランスは白色申告か青色申告のどちらかで確定申告ができます。青色申告をすればそれだけで「青色申告特別控除」が受けられます。白色申告には特別な控除がありません。
ただし、青色申告をするには事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。白色申告は特別な事前申請が必要ありません。また、白色申告は単式簿記による帳簿づけで済みますが、青色申告は複式簿記による帳簿づけが原則です。そういった点で多少面倒ではありますが、税金対策の面からは青色申告がオススメです。
青色申告特別控除
青色申告者は、最高65万円が控除されます。ただし、原則の複式簿記で帳簿づけし、それに基づいた貸借対照表と損益計算書を添付して、期限内に申告した人が控除の対象となります。なお、上記の原則に拠らない青色申告者の場合でも、最高10万円が控除されます。
2:仕事上で使ったものは経費に計上する
2つめのポイントは、仕事上で使ったお金は経費に計上することです。総所得額から控除額と経費を引いた分が課税対象となります。つまり、経費が大きくなれば、その分課税所得額が小さくなるので、税金も減らせるというわけです。
フリーランスの場合、個人の支出と事業の経費が混同しやすい環境にあります。私的な支出を経費として計上し、不正に節税しようとしていると疑われないためにも、公私の支出を明確に分けて管理することが大切です。
3:専従者給与を払う
3つめのポイントは、専従者給与を払うことです。青色申告には、家族や親族などが仕事を手伝っている場合に、その人に対する給与を経費として計上できるという特例があります。それが、青色申告専従者給与の特例です。
青色申告専従者給与の特例を受ける場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。
一方、白色申告には事業専従者控除があります。白色申告の場合は特別な届出書は要りません。詳しくは、以下のページを参照してください。
⇒国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
4:国民年金の支払いをする
4つめのポイントは、国民年金の支払いをすることです。20歳以上の人が国民年金の保険料を納めることは法律で義務づけられています。フリーランスは第一号被保険者に該当し、国民年金を納めなければなりません。
国民年金は社会保険料控除の対象となります。控除を受けるには、国民年金を支払うだけでなく、確定申告の際には日本年金機構から送付された控除証明書を添付し、忘れずに申告する必要があります。必要書類を提出して申告することで控除が適用され、税額が軽減されます。
5:国民年金基金に加入する
5つめのポイントは、国民年金基金に加入することです。国民年金基金とは、国民年金に上乗せして第一号被保険者の老後の所得を保障する公的年金です。国民年金とセットで加入することができます。
国民年金基金も社会保険料控除の対象となります。こちらも国民年金基金から送付された控除証明書を添付して申告します。支払っていても申告しなければ控除されないので、申告漏れがないよう注意しましょう。
6:小規模企業共済に加盟する
6つめのポイントは、小規模企業共済に加盟することです。小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や個人事業主を対象とした退職金制度です。この制度を利用して、自分の退職金を積み立てておけます。
小規模企業共済の掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象となります。他に確定拠出年金もこの控除が受けられます。これも、確定申告の際に支払った掛金の証明書を添付して提出する必要があります。
⇒中小機構「共済制度」
⇒国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
フリーランスの税金対策:経費の種類
次は、フリーランスの税金対策として、経費の種類を紹介します。
地代家賃・水道光熱費全てまたは一部
仕事で使用している事務所や店舗、駐車場の利用料があれば地代家賃として計上できます。事務所や店舗の水道光熱費も同様です。自宅を仕事場としても使っている場合には、仕事で使っている分だけを経費にできます。例えば、自宅の一室が仕事場なら、面積比に応じて家賃を按分し仕事場だけの家賃を算出します。水道光熱費も、仕事で使った分のみ計上できます。
取材やセミナー参加などの旅費交通費
取材やセミナー参加などの旅費交通費も経費になります。あくまでも仕事での旅費交通費です。家族旅行やプライベートでの旅行については計上できません。SuicaやPASMOなどの電子マネーを使用している場合には、履歴を印字しておくとよいでしょう。
携帯や家電などの通信費
携帯や家電などの通信費も経費にできます。ただし、携帯を私用と仕事用で分けていない場合は、仕事で使った分だけを計上できます。
10万円を超えるPCなどの減価償却費
仕事で利用するために、10万円を超えるPCや小型車などを購入した場合、減価償却費として計上できます。時の経過とともに価値が減っていく資産のことを減価償却資産と言います。一般に使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上のものが減価償却資産に該当します。
このような資産は、取得した時に全額を経費として計上するのではなく、法律で定められた耐用年数の間に分割して計上します。減価償却費の概要や耐用年数の一覧などは以下のページを参照ください。
画像処理や記事依頼などの外注費
画像処理や記事作成などを外部の人に依頼した場合、外注費として計上できます。青色申告決算書では、外注工賃と書かれています。
設備費やソフトなどの雑費
仕事で利用する設備やソフトを購入した場合も経費にできます。ただし、10万円以上なら減価償却費に該当します。10万円未満のものや耐用年数が1年未満のものは消耗品費として計上します。
フリーランスの税金対策:控除の活用例
次は、フリーランスの税金対策として、控除の活用例を紹介します。
青色申告で65万円の特別控除を受ける
先に触れたように、青色申告特別控除では最高65万円か最高10万円のどちらかの控除が受けられます。65万円の控除を受けるには、次の条件が必要です。
- 複式簿記で帳簿をつける
- 貸借対照表と損益計算書を添付する
- 期限内に申告する
青色申告をしても条件に満たないと10万円までの控除になってしまいます。少し手間はかかりますが、最大限の控除を受けられるように準備しましょう。
ふるさと納税を行う
ふるさと納税を行うと、寄附金控除を受けられます。ふるさと納税は、納税とは言っても都道府県や市区町村に対する寄附金の扱いになります。寄付金控除の金額は、以下の2つのうち低い方の金額から2,000円を引いた額です。
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
ふるさと納税の概要や控除額の詳しい計算方法などは、以下のページを参照ください。
⇒総務省ふるさと納税ポータルサイト
⇒国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
小規模企業共済へ加入して所得税を減額する
6つのポイントにも挙げたように、小規模企業共済に加入すると所得税を減額できます。確定拠出年金でも同じ控除を受けられるので、自分に合った積み立て方法を選んで、賢く税金対策しましょう。
フリーランスの税金対策で怪しまれない4つのポイント
最後に、フリーランスの税金対策で税務署に怪しまれないようにするポイントを4つ紹介します。
地代家賃の割合に気を付ける
1つめは、地代家賃の割合に気をつけることです。自宅と仕事場を兼ねている人は、地代家賃の算出方法を明記したり、専有面積がわかる資料を添付したりするなどして、計上した金額が正しいことを示しましょう。
全てのものを経費として計上しない
2つめは、全てのものを経費として計上しないことです。フリーランスの場合、私的な支出と公的な支出を混同しがちです。レシートや領収書、銀行口座などは個人用と事業用に分けて管理すると公私が明確です。私的な支出を誤って計上するミスが避けられます。
あからさまに利益が少なすぎない
3つめは、あからさまに利益が少なすぎないことです。利益が少ない場合、税金対策のために個人的な支出を経費に計上して、不正に利益を少なくしているのではないかと疑われてしまいます。納税は国民の義務なので、正しく申告することが重要です。
事実利益が少ない場合は、外注費がかさんだため、仕入先の値上げのためなど、なぜ利益が少ないのかその理由を明記しておくとよいでしょう。
雑費や接待交際費が多すぎないこと
4つめは、雑費や接待交際費が多すぎないことです。雑費は支出の内容が具体的にわかりにくいので、個人の支出が紛れ込みすい科目です。接待交際費も個人的な飲み会の費用を計上しやすい科目と言えます。
これらの科目が目立ってしまうと、税務署に疑われる原因になります。仕事での支出だと税務署がわかりやすい科目で計上することが大切です。
フリーランスの税金対策のまとめ
今回は、フリーランスの税金対策について、6つのポイントに加え、各種控除と経費の種類をまとめました。節税のポイントは、各種控除を賢く利用することです。また、税務署の疑いを避けるコツは、個人と仕事の支出を明確に分けて管理し、用途がわかりやすい科目で経費を計上することです。今後の税金対策に、今回紹介したポイントとコツをぜひ役立ててみてください。