フリーランスで仕事を始める時、「これだけは絶対に必要な届け出」というものは、実はないんです。フリーランスで仕事を始めようと思い立ち、順調に仕事が取れるようになっていって、本業だった会社勤めがあればそれを辞め、フリーの仕事一本でなんとかやっていけるようになる……そのプロセスで必要になるのは、帳簿を付けておくことと確定申告くらいでしょう。
でも「開業届けは必要じゃないの?」と思った方も多いかもしれません。そうなんです。実は開業届けは必ずしも出さなければならないものではないのです。でも、出しておいた方がお得になる!というメリットがいろいろあります。それでは、開業届けはいつ出せばよいか、どう書けばよいかなどをご紹介していきます。
フリーランスが開業届を出すのはいつがいい?
フリーランスで仕事を始める時、開業届けを出すタイミングはいつがいいのでしょうか。開業届けを出すタイミングを探ってみましょう。
事業を始めてから1か月以内だけど届け出しない人もいる
事業をスタートしてからもう1か月近く経つけれど出していない、という人もいます。開業届けは、新しく事業をスタートさせる際に税務署に提出する書類なのですが、義務ではありません。
提出期限は事業開始から1か月以内とされていますが、出さないままフリーランスで働いている人もいます。義務ではないため、期限は一応決まっていますが出さないからといって罰則があるわけではありません。
気づいた時点で開業届を出しても問題は無し!
気付いた時点で開業届けを出しても問題はありません。「別に罰則がないなら出さなくてもいいか……」とほったらかしにしておくのは、とてももったいないことなのです。実はフリーランスで仕事をしていく上で、開業届けを出すことには大きなメリットがあります。
フリーランスが開業届を出す3つのメリット
フリーランスで仕事をしていく上で、開業届けを出すことのメリットとは、どんなものがあるのでしょうか。フリーランスで開業届けを出すことには、3つの大きなメリットがあります。
青色申告ができるようになる
最大のメリットと言えるのは、青色申告ができるようになる、という点です。確定申告には白色申告と青色申告があります。白色申告の方が簡単で単純ですが、青色申告の方が所得税の控除額が大きくなります。
さらに赤字が出てしまった時、次年度に繰り越すことも可能です。節税効果が大きくなるのは青色申告。青色申告をするには、開業届けを出さなければなりません。
小規模企業共済に加盟できる
開業届けを出すことで、小規模企業共済というものに加盟できるようになります。小規模企業共済とは小規模企業の経営者や個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
全国で133万人もの人が加入しているという共済で、掛け金を全額所得控除できます。もしもの時のため、将来のために役立つだけでなく、節税効果も抜群です。
屋号名で銀行口座を開設する事ができる
開業届けを出すときに、屋号を決めることができます。屋号が決まると、屋号名で銀行口座が開設できるようになります。これまではなんとなくやっていた副業だった、という方も、開業届けを出すことで、個人事業主として社会的な信頼が高まります。
フリーランスが開業届を出す2つのデメリット
フリーランスで仕事をしている人が開業届を出すことで、デメリットになることも多少あります。そこも一応チェックしておきましょう。
確定申告時の税務署からのチェックがきつくなる
開業届けを出すことで、個人事業主としてきちんと認知されます。税務署にもその届け出が出されるということなので、確定申告時に税務署のチェックが少々きつくなると言われています。ただし開業届けに関係なく、一定以上の所得があれば確定申告は必要になるので、いずれにせよ不正があればチェックされることは同じです。
失業手当が受けられなくなる(副業の場合)
本業を辞めて副業だった仕事でフリーランスとしてやっていくと決めた場合、失業手当はそもそも受ける資格が無くなります。失業手当は失業し、さらに次の就職を探す人のために支給されるものです。
フリーランスで独り立ちしたばかりの人は、仕事に営業にと慌ただしい毎日を送ることとなるでしょう。しかし失業手当をもらうためにはしょっちゅうハローワークに通い、就職先を探して履歴書を書き、送って面接を受けなければなりません。
フリーランスの仕事と、ハローワークでの就職活動を両立することは難しいですし、失業保険を支給される権利も持たないということになります。失業手当はあくまでも「一時的に職を失っている人の再就職を支援するための生活等補助金」であり、仕事を辞めたから誰もがもらえるというものではないのです。
フリーランスの開業届の書き方と注意点
フリーランスの方の開業届けの書き方と注意点についても知っておくと良いですね。どんな点に注意すべきかを頭に入れておきましょう。
国税庁のホームページからPDFをダウンロードする
開業届けのテンプレートは、国税庁のHPからPDFファイルをダウンロードして使用できます。
こちらのページからダウンロードできるので、プリントアウトして記入します。またPDFにそのまま入力してから印刷することも可能です。入力途中でダウンしてしまうと保存できないため、気を付けましょう。手数料は無料で、添付書類は特に必要ありません。
また同じページから書き方に関するPDFもダウンロードできます。そちらを参考にすると間違えることなく記入することができます。
職業については「日本標準職業分類」を参考に!
職業欄に、どう書いたらいいのかわからない、ということもありますよね。そんな時は、総務省のサイトにある日本標準職業分類を参考にして書きましょう。
といっても、こちらのサイトでしっくりくる職業名が見当たらない場合もあります。たとえば記者や編集者などの仕事はありますが、「ライター」という仕事は見当たりません。そんな時は職業名を「ライター」、業務内容を「ホームページ作成時に使用するコンテンツとしての記事作成」など、その仕事の内容がわかるように書いておけば大丈夫です。
今はライターだけだけれど、プログラミングも勉強しているのでフリーのプログラマーとしてもいずれやっていきたい……などの場合は、事業内容に「その他」などの文言を入れておきましょう。
注意点がひとつあります。所得が290万円以上ある場合は、個人事業税がかかる場合とかからない場合があります。たとえばライターの場合、「文筆業」として登録すると事業税が非課税になります。なぜなら、芸術家系統の業種の場合、事業税が非課税になるからです。
屋号かかる場合は空欄でも構わないが企業名があった方が良い事も
屋号は空欄で出しても何も言われません。ただし、個人名で提出するよりも、屋号がついている方が社会的な信頼を得やすくなります。といっても、屋号はけっこう重要です。キラキラネームをつけると、覚えてもらえない上に、間違えられやすくなります。
屋号を付ける時は、事業内容がすぐにわかり、さらに地域や自分の名前などを入れておくなどがスタンダードです。漢字やひらがな、カタカナのほか、アルファベットも使用できます。
必要事項を記載したら開業届を提出する
必要事項を開業届けに記入したら、いよいよ提出です。納税地を所轄する税務署に提出しますが、直接持っていくか、郵送するかになります。
提出時に忘れてはいけないのが、一部控えをコピーしてもらう事です。さらに青色申告で確定申告を行うという場合は、青色申告承認申請書も開業届けと一緒に提出すると、手間がかかりません。
青色申告承認申請書は、国税庁のサイトからPDFをダウンロードできます。
フリーランスの開業届のまとめ
フリーランスの開業届けは、出した方がお得になることがたくさんあります。その場合には、事前に屋号もしっかり考えておきましょう。また事業税は事業内容によってパーセンテージが異なるので、自分の仕事内容をどう申告するかもチェックしておきたいですね。